WATCH COMPANY公式ブログ~時計修理技術者コラム~

時計修理専門店WATCH COMPANYの公式ブログです。

時計修理技術者コラムVol.7 カレンダー送りの構造と不具合~Cal.ETA7750編~

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カレンダーの不良

日頃お問い合わせいただく時計の不具合で比較的多くご相談をいただくのが、カレンダーの不具合です。「カレンダーが変わらなくなってしまった」「カレンダーの切り替わりが非常に遅い」などの故障はなぜ起こるのでしょうか?
今回はブライトリング/クロノマットエボリューションや、オメガ/スピードマスターなど、クロノグラフモデルに多く使用されているCal.ETA7750を例に取りご紹介させていただきます。

カレンダー車とカレンダー送りの仕組み

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時計のカレンダーディスクを送る役割をしているのがカレンダー車です。Cal.ETA7750のカレンダー車は、歯車にカレンダーディスクを送る爪を組み合わせた構造になっています。f:id:watchfan1999:20160803140211j:plain

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カレンダー車は、筒車と連動して、1日(24時間)をかけて丁度1周します。カレンダー車の爪がカレンダーディスクの歯を1日分送る構造になっています。

このようなシンプルな構造のため、爪がカレンダーディスクを送っている最中に、カレンダーの早送り作業を行ってしまうと、カレンダーディスクの歯と、カレンダー車の爪を変形や破損させてしまう原因となります。

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変形したカレンダー車です。カレンダーが変更できなくなったり、カレンダーがAM0:00丁度に切り替わらなくなります。

 

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カレンダー車の不良により、日付の切り替えがAM6:00ごろになった時計

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新品のカレンダー車(前)と、変形したカレンダー車(後)

カレンダー車と共に、カレンダーディスクも破損した場合、カレンダーディスクの交換が必要になり、修理代金が高額になるケースがあります。
また、カレンダーディスクはメーカーのオリジナルの部品が使用されているモデルもあり、メーカーオリジナルのカレンダーディスクは入手が困難なため、メーカーで修理を受けざるを得ない場合もあります。

カレンダー早送り禁止時間帯と、カレンダーの操作方法

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上記でご紹介したような故障を避けるために、カレンダー操作禁止時間帯が設けられています。

 

カレンダー早送り禁止時間帯……カレンダーが切り替わる前後4時間(PM8:00~AM4:00)の間に、カレンダーの早送り操作を禁止している時間帯のことを指します。
※時計のモデルによって前後3時間~4時間の差があります。

 

上記時間帯はカレンダー車の爪と、カレンダーディスクの歯が干渉しているため、カレンダーの早送り操作は行わないでください。

日付・時刻合わせをする際は、
①文字盤上の時間をAM6:00(もしくはPM6:00)にまず合わせます。
②日付を前日まで早送ります。
③前日まで送った後、針回しで現在の日付・時刻まで調整します。

上記を行うことで、操作禁止時間帯を避け、安全に時間の調整を行うことができます。
大切なお時計のために、時間調整にも気をかけてご使用いただくことをお勧めします。

 

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時計修理技術者コラムVol.5 自動巻の巻き上げ効率~ローター真編~

 

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定期メンテナンスのススメ・部品の摩耗

機械式の時計を永く使うには定期メンテナンスが欠かせません。その中でも自動巻きのお時計をお持ちのお客様から「着けていてもすぐに止まってしまう。」、「夜外して朝には止まっていた。」などのご相談を非常にたくさんいただきます。なぜそのような状態になってしまうのでしょうか?今回はロレックスのお時計を例にとって自動巻きの仕組みと部品の摩耗についてご紹介いたします。

自動巻の仕組み

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 自動巻で重要な役割を担っているのがローターです。ローターは半月型でおもりの役割をし、回転することでゼンマイが巻き上がります。

着用していると腕の動きに連動してゼンマイが巻き上がるため、使用中はゼンマイを手巻きする必要がありません。

ロレックスのローター

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 現在流通しているロレックスの時計のほとんどに自動巻きの機構(パーペチュアル機構)が搭載されています。ローターは自動巻きの機構で非常に重要な部品で、ムーブメントの中でも大きな部品です。十分な巻き上げ効率を確保するために、大きなローターをスムーズに回転させる必要があります。しかし、大きなローターを支えている軸(ローター真)には非常に大きな負担がかかっています。

 

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状態良好のローター真。

 

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新品のローター真です。
摩耗や傷は一切ありません。

 

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 使用に伴い、汚れやさびが発生したローターです。

 

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ローター真部分の油が乾いた状態のローター真です。
ローター真の周辺に赤い錆や、ローター真が削れたことによって発生した鉄粉が付着しています。

 

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先端が激しい摩耗により細くなってしまったローター真です。交換が必須になります。
この状態まで経過してしまうと、ローターを適正な位置で支えることができず、ムーブメントや、裏蓋に擦れてしまう症状が起こります。(時計を振るとカチカチと異音が鳴るようになります。)
ムーブメントや裏蓋に擦れている状態での使用が長く続くと、擦れて傷がつくだけではなく、大量に鉄粉が発生し、他の部品も痛めてしまう可能性があります。

 

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ローターが擦れて傷ついたムーブメント。

 

高額なメンテナンス費用を避けるためにも……

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 「最近遅れるようになった。」、「以前より止まるのが早くなった。」その他内部異音など、具体的な症状が見える場合はもちろん、そうでなくても意外と時計内部の摩耗や劣化が進行していることもあります。

大切なお時計を永く使っていただくためにも、ぜひ定期的なメンテナンスをお勧めいたします! 

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時計修理技術者コラムVol.6 外装の変形や歪み~ロレックスバックル(クラスプ)編~

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外装の変形や歪み

バックルは日ごろ腕時計を着脱する際に必ず動かす部品です。毎日使用する中で、変形や摩耗によって金属同士の食い合いが変わり、外れやすくなってしまうことがあります。
今回はロレックスのバックルを例にとって、バックルの緩みに関してご紹介いたします。

ロレックスのバックルの歪み

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ロレックスのバックルは2枚の蝶番になっているプレートをツメで止める形状になっています。※画像参照

着脱するたびにツメに負担がかかるため、徐々にツメが開いてしまいます。また、ツメを受ける部分も常に負担がかかるため、歪みやすくなります。

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ツメが開き、金属が歪んだ状態だと、きちんとバックルが閉まらずに、開いてしまいます。

f:id:watchfan1999:20160719160712j:plainツメが開いています。

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金属の開きを修正いたしました。

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バックル付け根の金属が歪んでいます。

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金属の歪みを修正いたしました。

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先ほどはしっかりと締まらなかったバックルも、金属の修正により、ぴったりと収まるようになりました。

 

大きな事故や故障が起こる前に……。

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歪みや摩耗が進むと、時計の落下や、大きな破損につながります。バックル一式の交換をしないといけなくなる前に、定期的なメンテナンスを受けていただき、お時計の内部だけではなく、外装のダメージもケアしましょう! 

 

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時計修理技術者コラムVol.4 ベゼルのトラブル~ブライトリング・回転インナーベゼル編~

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回転インナーベゼルの不具合

ブライトリングのナビタイマーといえば、航空用回転計算尺を搭載しているベゼルで有名ですが、そんな回転インナーベゼル搭載のオーナー様から「ベゼルの回転が重くなってしまった。」「ベゼルが完全に固まってしまった(動かなくなった)」などの問い合わせを頻繁に頂きます。

今回はブライトリングのナビタイマーを例にとって、回転インナーベゼルの不具合と、修理時の対応をご紹介いたします。

 

時計ケースの構造

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ナビタイマーのケースの構造は【スリーピース構造】と呼ばれているもので、回転計算尺が内蔵されているベゼル、ムーブメントが収まるミドルケース、裏蓋の3つからなります。

 

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ベゼル

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ミドルケース

 

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裏蓋

 

このケース構造の大きな特徴としては、ベゼル部分が3点のピンで固定されていることです。

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ベゼルの動作不良は、ベゼルとミドルケースのわずかな隙間から汚れが浸入し固着してしまう、ベゼル内部に取り付けられているゴムパッキンのシリコングリス切れ、パッキンの劣化などが原因になります。

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ベゼルとケースのわずかな隙間から汚れが浸入します。

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油が乾いてしまったパッキンは、シリコングリス塗布し直します。

 

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ベゼルの裏には、ゴムパッキンの摩擦を軽減する役割を担っているプラスチック製のパッキンが内蔵されています。洗浄の際は、この部分の汚れも丁寧に除去します。

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ゴムパッキンは特殊形状(溝や段差が付いています)のものが多く、交換対応ができない場合は、汚れを徹底的に除去し、シリコングリスを塗布します。

 

上記の作業を行い、ケースを組みなおすと、ほとんどの場合は修理前よりもスムーズにベゼルが回転するようになります。

 

ベゼルの回転が悪くなったら……

時計の機能に直接影響する箇所ではなく、使用することがほとんどない機能のため、気付きにくい不具合ではありますが、ベゼルの油が乾いているということは、ムーブメント内部の油も減少している可能性が高いため、オーバーホール時期の目安になるのではないでしょうか?
お持ちのお時計のベゼルの回転が悪くなってしまった場合は、是非ご相談ください。無料でお見積もりさせていただきます。オーバーホール含む修理も、ベゼルの回転不良に対する部分的な修理も承ります。 

 

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時計修理技術者コラムVol.3 クォーツ時計の仕組み~電子回路編~

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クォーツ時計の故障原因

クォーツ時計(クォーツ、水晶時計)の故障で8割以上を占める原因が、電子回路の不具合です。電子回路に不具合があると、時計の精度不良(遅れや進み)、電池寿命の短縮などが起こります。

今回はクォーツ時計の電子回路について紹介します。

クォーツ時計の仕組み

クォーツは「石英」と呼ばれる鉱石の一種です。クォーツ時計はクォーツの結晶を振動させることで一定の進度を保っています。その振動を調整している部品が電子回路です。

電子回路

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電子回路の故障は、経年劣化により引き起こされる場合が多いです。
一般的に電子回路の寿命は10年程度といわれています。それにより定期的に交換を必要とする部品となります。

電池の液漏れによる故障

クォーツ時計は電池を動力源としているため、電池の液漏れによる不具合も非常に多いです。少量の液漏れによる電子回路の破損であれば、電子回路の交換(+オーバーホール)にて修理が可能です。
しかし、電池切れ後、長期間古い電池を入れたままにしておくと、電子回路に悪影響を与えるだけではなく、ムーブメント全体に劣化や腐食が広がり、ムーブメント一式の交換が必要になる場合があります。

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電池切れ後、長期間電池を入れたまま放置された状態です。

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液漏れした電池です。

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電池の液漏れによって電子回路が破損しています。

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液漏れが進行してしまうと、ムーブメントにも劣化・腐食が及びます。写真のような状態になった場合は、ムーブメント一式の交換が必要になる場合があります。
 

クォーツ時計を長く使っていただくために

クォーツ時計をより永く使っていただくために、電池切れで止まってしまった時計は早めに電池交換をすることをお勧めいたします。時計修理専門店WATCH COMPANYでは、電池交換で依頼いただいた場合も、専用の測定機を用いて、精度や消費電流を調べ、回路の状態を点検させていただきます。ムーブメント内部の油の状態や、汚れ具合も点検し、必要に応じてオーバーホールのご提案をさせていただいております。
※念入りにチェックを行うため、当日の電池交換のご依頼は承ることができません。何卒ご了承ください。
大切なお時計の状態を無料点検させていただくこともできます。電池交換のタイミングでお気軽にご相談ください!  
 
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時計修理技術者コラムVol.2 外装の汚れと腐食~ステンレススチール編~

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セルフメンテナンスのススメ

精密機械である機械式時計は、定期的なメンテナンスは専門店やメーカーに依頼することは一般常識となっていますが、日常的にご自身でできるメンテナンスも非常に重要です。
日常的なケアを怠ると、外装の破損など、思わぬメンテナンス費用が掛かることもあります。
今回はご自身でもできる手軽なメンテナンスをご紹介いたします。

ステンレススチールとは

ステンレススチールとは、STAIN(汚れ・さび)LESS(無し)という、その名の通り、汚れやさびに強い金属です。
鉄の含有量を50%以上、クロムを10.5%以上含む合金で、クロムが表面に酸化皮膜(不動態皮膜)を形成するため、非常に腐食しにくい素材です。メッキや塗装をしなくても良いため、ほとんどのブランドが高級時計の外装に使用しています。
しかし、毎日の使用により、汗・皮脂・ほこりなどの汚れがたまり、腐食が起こってしまうことがあります。

 

ケース①

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使用により汚れてしまったバックル

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洗浄して、きれいに汚れを除去できました。

上記のように早い段階で汚れを落とせば、腐食も防ぐことができます。
しかし、汚れが付着したまま、長期間の使用を続けると…。

 

ケース②

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先ほどは洗浄できれいに除去できましたが…。

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汚れた箇所が腐食していました!

 

※腐食部分の拡大

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腐食が進んでしまった部分は金属が溶けて、細かい穴がたくさん開いたような状態になっています。さらに進行が進むと、金属が折れてしまう可能性もあります。

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上記程度の腐食であれば、新品仕上げ(傷取り研磨)によって腐食箇所を修正することができます。
平面上のの凸凹が少なくなればなるほど、汚れが付きづらくなります。
再度、酸化皮膜が作られるようになれば、進行を食い止めることができます。写真のような軽度の腐食であれば、除去することができます。

金属の腐食を進行させないために

ステンレスは汗や皮脂の蓄積汚れが天敵です。外装のトラブルを避けるためにも、日々のケアをお勧めさせていただいております。一定期間のタイミングで拭き掃除や汚れの除去を行っていただくことで、外装不具合を減らすことができます。

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マイクロファイバークロス
細かい繊維で作られたクロスです。その他、シカの革を植物油でなめしたセーム革なども時計の外装をきれいに拭くのに適しています。

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豚毛ブラシ(ナイロン刷毛)
時計ケースとブレスレットの間や、ブレスレットの駒間を磨くことができるブラシです。毛先が柔らかいため、時計を傷つけること無く汚れを落とすことができます。

万が一トラブルに見舞われてしまった際は、ぜひ時計修理専門店WATCH COMPANYへお問い合わせくださいませ。お見積もりは無料です。発送をご希望のお客様には無料梱包キットを手配させていただきます。

 

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POWER Watch 2016年7月号(No.88)に当店が紹介されました!

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