WATCH COMPANY公式ブログ~時計修理技術者コラム~

時計修理専門店WATCH COMPANYの公式ブログです。

POWER Watch 2017年1月号(No.91)に当店が紹介されました!

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11月30日に発売されたPOWER Watch2017年1月号(No.91)の【全国時計修理優良店ガイド】の特集に当店が紹介されました!

今回は【腕時計の教科書~第2回 機械式ムーブメントの仕組みを知る~】で機械式時計の構造を紹介する特集があり、機械式時計のユーザーは役に立つこと間違いなしです!
2016年新作の徹底比較特集もあり、今後購入予定の方にも読みごたえがある一冊になっています。是非チェックしてください。 

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時計修理技術者コラムVol.18 新品仕上げについて~鏡面仕上げ編~

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新品仕上げとは?

使用により時計に傷が付き傷取りに出したいけど、「新品仕上げ」って何をするの?「新品仕上げ」をするとどうきれいになるの?と不安に思っているお客様も多数いらっしゃると思います。

今回はお客様が通常見ることができない新品仕上げの工程や、仕上げに使用する道具をご紹介いたします。

鏡面仕上げに使用する道具

鏡面部分の仕上げにはバフ(羽布)研磨を行います。研磨といっても削り取るのではなく、磨き込んでつやを出す作業を行います。
使用する道具はバフと呼ばれる柔らかい布やフェルトでできたホイール状の研磨製品とアルミナやクロム等をベースにした研磨剤です。

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鏡面仕上げの工程

磨き作業は、モーターに取り付け回転したバフに研磨剤を軽く当てて溶かし、磨き面に練り込むようにして行います。WATCH COMPANYでは主に1.荒磨き、2.中磨き、3.仕上げ磨きの3工程で行います。

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ロレックスのバックルサイド(鏡面部分)を磨いていきます。

1.荒磨き

フェルトバフ(A番)に白棒4000番を付け荒磨きを行います。
時計の形状を保ちつつ、傷を取ることのバランスを考えながら行います。光の当たる角度を変え、傷残りが無いかしっかりと確認を行います。

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荒磨きだけでもほとんどの傷が除去できています。拡大するとバフ目(縦線状の跡)が付いているのがわかります。

 

2.中磨き

青バラバフにD-24を付け中磨きを行います。
荒磨き時のバフ目や、研磨剤残りを無くし、最終仕上げにつなげることを意識して行います。

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バフ目がほとんど目立たなくなりました。

 

3.仕上げ磨き

布バフ(トクハネバフ)にD-24(青)とノンクロン(黄)少量を付け仕上磨きを行います。
バフ目が残っていないか、角度を変え、確認しながら行います。鏡面部分に研磨剤残りが無いか確認します。(洗浄後にくもりの原因となるため)

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完全に傷を除去することができました。

 

その他

基本的には、上記の道具を使用しますが、磨く時計の素材や形状によって、さらに柔らかい布バフや固いフェルトバフ、径や形を加工したバフ、様々な研磨剤を使い分けます。
また、いずれの工程においてもバフを当てる際の強さや角度、回転数、研磨剤の量等、磨く時計の状態に合わせ最適なものになるように対応しております。

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新品仕上げのススメ

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お客様からお預かりしたお時計の傷取りをご依頼いただいた際は、1本1本全てのお時計に対し丁寧にこういった作業を繰り返し磨き上げております。お時計の傷が気になる場合はオーバーホールと合わせて新品仕上げのご依頼をいただけましたら幸いです。

 
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時計修理技術者コラムVol.17 自動巻きの不具合について~ロレックスCal.3135編~

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ロレックスに起こる不具合

当店で年間受注件数が最多となるブランドはロレックスですが、ご依頼いただく内容としては、
・精度不良や止まり。
・リューズを巻きあげる際に違和感がある。(巻くときに引っ掛かりがある。巻き上げが重い。)
・一日時計を着用し、夜外して次の日の朝には止まっている。(巻上の持続時間が短い。)
などの症状が挙げられます。
これらの不具合は、実は自動巻き機構の歯車が原因となっていることが多いのです。
今回はロレックスのCal.3135を例に自動巻きの不具合をご紹介いたします。
※Cal.3135:ロレックスの全時計の中で広く採用されているムーブメント。現行のデイトジャスト(メンズ)や、サブマリーナデイト、ヨットマスターなど、デイト表記有りの3針の時計に搭載されています。1988年に開発されてから30年近く大きな変更もなく使用されています。

リバーシングホイールの動作不良

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ロレックスCal.3135リバーシングホイール/自動巻きの主要歯車で、ローターの回転をゼンマイの巻き上げの力に変える役割を行っています。ローターの回転や手巻き時に回転するため、非常に摩耗しやすい部品ですが、ロレックスのリバーシングホイールはアルミニウム素材にレッドアルマイト処理を施しているため、耐久性が高いです。また、それでいて軽量のため、高い巻き上げ効率を実現しています。

 

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正常なリバーシングホイールです。

 

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使用により摩耗したリバーシングホイールです。
長年の使用による経年劣化や、必要以上に手巻きをすることでラチェット部分に負荷がかかり、削れています。この状態になると、手でゼンマイを巻いた際に手巻きが重く感じたり、ローターが一緒に回転してしまうようになります。
オーバーホールだけでは巻き上げ不良は改善されないため、部品の交換が必要です。

 

手巻きが重くなってきたら……

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手巻きが重くなってきたら油切れだけではなく、リバーシングホイールが摩耗している可能性があります。早めにオーバーホールしていただければ、部品を交換することなく、部品の修正で対応できる場合もあります。手巻きが重くなった状態で長期間使用を続けると、関連する部品も破損する原因となります。

リューズに負荷がかかり、破損してしまい高額な修理代金になるケースもあります。
違和感を感じたら早めのメンテナンスを受けられれることをお勧めいたします。

 
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時計修理技術者コラムVol.16 クロノグラフの動作不良について~Cal.ETA7750編~

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クロノグラフの動作不良

クロノグラフ機能が付いたモデルの修理でよく「スタートやストップの操作ができなくなった」とご相談いただきます。
クロノグラフの故障の原因は様々考えられますが、今回はよく発生する原因をETA7750を例に取りご紹介いたします。

オペレーティングレバーの変形

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ETA7750オペレーティングレバー新品(左)、変形したETA7750オペレーティングレバー(右)

オペレーティングレバーが原因でクロノグラフ不良が起こる場合、主な原因としてプッシャー(プッシュボタン)のストロークが当たる部分の変形があげられます。※写真右矢印箇所
正常なものはストロークが当たる部分が垂直になっていますが、不良部品は内側へ曲がっています。油切れなどで、動きが固い状態でプッシャーを押し込むことで変形してしまいます。部品が変形した状態でプッシャーを押し込んでも、ストロークがレバーを稼働させないため、クロノグラフの動作不良が起こります。
変形が僅かなものは修正して部品を再生することができますが、写真のように大きく変形してしまった場合は、修正後も再度変形しやすいため、部品の交換が必要になります。

クロノセンター車のストップレバー不良によるもの

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ETA7750ストップレバー/クロノグラフのスタートとストップの操作の際に稼働する部品です。

 

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通常、クロノグラフセンター車のストップレバーは写真のように歯車の側面部分に接してスタートとストップを規制しています。

 

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写真のようにセンター車の上にストップレバーが乗り上げてしまっている状態になると、スタートとストップの規制ができず、クロノグラフが動作しなくなります。
一度この状態になってしまうと、内部修正を行わないと改善することができません。また、この状態でレバー操作を繰り返してしまうと、先に紹介したオペレーティングレバーの変形にもつながってしまいます。

 

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ストップレバーは、矢印部分のバネ部分を調整することで修正を行うことができます。

 

クロノグラフモデルの注意点

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クロノグラフモデルの場合、動作に関連する部品が多いため、1か所不良がある状態で使用を続けると、他の部品も連動して不良を起こすケースが多いです。
プッシャーの操作が固くなったり、反応が悪くなった場合は、早めに時計内部の状態を確認していただくことでトラブルを回避することができます。
是非、WATCH COMPANYの無料見積もりにお問い合わせください!

 

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横浜に修理受付窓口を開設いたしました!

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TOCみなとみらいにて修理受付が可能になりました。

みなとみらい21地区の主要駅のひとつ桜木町駅から徒歩1分、TOCみなとみらいで現行品の当社取扱いブランドに限り修理品のお預かりが可能です。見積まで土日を除く3営業日・最短納期2週間も変わらず対応しております。横浜エリアにお住まい・お勤めのお客様には特に便利にご利用いただけます。

 

横浜受付 平日10:00~17:00(土・日・祝日は休業となります)
※修理品お預かり業務のみとなります。見積・納品は本社からのご連絡と配送になります。
※電池交換のご依頼は3,240円~にて承りが可能です。本社にて作業を行うため、必ずお預かりとなります。(お預かり期間は約1週間です)

 

〒231-0062

神奈川県横浜市中区桜木町1-1-7
TOCみなとみらい10階 サーブコープ
TEL:045-228-5509

桜木町駅北改札から1分。コレット・マーレ横のエスカレーターから2階スカイデッキへ。外壁沿いを進み、オフィスエントランスからエレベーターで10階へおあがりください。

 

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右側奥・サーブコープカウンターにて当社専属スタッフが対応いたします。時計修理の受付をお申し付けください。「修理ご依頼書」をご記入いただき、お時計を預けて頂きましたら、土日を除く3営業日を目安に本社よりお見積もりのご連絡をさせていただきます。

 

 

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時計修理技術者コラムVol.15 一番受けの摩耗が引き起こす不具合~Cal.ETA2892編~

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部品の摩耗による不具合

日々修理を行わせていただいていると、「油切れ」、「摩耗」などの言葉を非常によく使用しています。摩耗といっても、時計の部品は非常に小さいため、専用のルーペを使用しないと判別できないレベルのものがほとんどになります。
今回は部品の摩耗と、摩耗に伴う不具合をフランクミュラーやブルガリなど多くのメーカーで採用しているETA2892の一番受けを例にご紹介していきます。

一番受けの仕組み

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一番受けはゼンマイが収められている香箱を上から押さえているプレート状の部品で香箱受けとも呼ばれます。ゼンマイを巻き上げる際に稼働する複数の歯車が取り付けられる土台にもなっています。※ムーブメントの種類によって構造は異なります。

ETA2892では、ゼンマイを巻き上げる際に、遊動車と呼ばれる丸穴中間車が左右にスライドし、自動巻きと、手巻きを切り替えを行っています。

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丸穴中間車(赤矢印部分)がある程度稼働できる作りになっています。このスペースが無いと、多くの歯車が連動してしまい、自動巻き上げができない、部品の負担が非常に大きくなるなどの不具合が生じます。

 

一番受けの不良(摩耗)

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新品の一番受け(前)、摩耗した一番受け(後)

丸穴中間車が入る軸は、油が切れると歯車が動くことで削れることがあります。後者の軸は大きく削れているため、歯車の可動範囲がより大きくなり、他の歯車にも悪影響を与えてしまいます。
写真の状態まで削れてしまうと、修正ができないため一番受けごと交換が必要になります。一番受けは比較的高額な部品となるため、交換すると必然的にトータルの修理料金も高くなってしまいます。

手巻きに違和感を感じたら……

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一番受けが摩耗した状態で感じる不具合(違和感)は、

 

・手巻きをした際にごりごりとした感触がする
・手巻きが非常に重い

 

などがあります。また、時計の機能としても自動巻き上げ不良や、パワーリザーブ不足などの症状も生じます。
実際の使用状況にもよりますが、

 

・長期間オーバーホールしていない
・手巻きを頻繁に行っている

 

などの場合は注意が必要です。思い当たる点がありましたら是非一度無料見積もりを受けていただくことをお勧めいたします。

 

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時計修理技術者コラムVol.14 ダイバーズウォッチの特殊構造~ロレックス シードゥエラー編~

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ダイバーズウォッチ(防水時計)の特殊構造について

機械式時計の防水技術が高まるにつれて、ダイバーズウォッチの時計ケースにも特殊な構造が搭載されるようになりました。その一つがヘリウムガスエスケープメントバルブ(ヘリウム排出バルブ)です。今回はロレックスのシードゥエラー(Ref.16600/116600)を例に役割と構造をご紹介させていただきます。

ヘリウムガスエスケープバルブの役割

飽和潜水は非常に高い水圧下での活動となります。その際に高分圧の窒素を摂取することで窒素中毒を引き起こす危険性があるため、酸素とヘリウムの混合ガスを使用することが多い。
ヘリウムは密度(分子)が小さいため、高水圧下での呼吸抵抗の低減に役立ちますが、その分子の小ささゆえに、高性能のダイバーズウォッチでも内部に侵入してしまいます。
圧力が高いヘリウムガスが充満したままで低水圧(気圧)下に戻ると、ケース内外の気圧差で時計が破損する(ガラスが外れる)恐れがあります。
そういった破損を避けるために、内部に混入したヘリウムガスを逃がす役割をしているのがヘリウムエスケープバルブです。

ヘリウムガスエスケープバルブの構造

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ロレックス/シードゥエラー/16600 ヘリウムガスエスケープバルブ(前)、分解(後)

ヘリウムガスエスケープバルブは普段使用している際(大気圏使用時)は、ケースとバルブ間のパッキンが密着し、生活水を遮断しています。また、深海では水圧を利用し、内蔵されているスプリングがバルブを押し、防水性を保つ仕組みになっています。このバルブの構造は1967年にロレックスが開発し、特許を取得しています。

ダイバーズウォッチの落とし穴

ヘリウムガスの排出を目的として堅牢なオイスターケースにバルブを取り付け、パッキンで防水をしているため、パッキンが劣化し断裂等を起こした場合はバルブから浸水してしまう恐れがあります。時計修理専門店WATCH COMPANYでは、オーバーホールの際にバルブを完全に分解してバルブ周りに付着した汚れやごみを除去するだけではなく、劣化したパッキンの交換も行っております。

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ダイバーズウォッチの防水性は非常に素晴らしい反面、特殊構造部分のケアを怠ると水入りなどのトラブルに遭う恐れがあるため、定期的なメンテナンスをお勧めいたします。

 

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