WATCH COMPANY公式ブログ~時計修理技術者コラム~

時計修理専門店WATCH COMPANYの公式ブログです。

時計修理技術者コラムVol.26 リューズの操作不良~ロレックスCal.2235編~

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ロレックス/レディース時計のムーブメント

ロレックスのレディース時計の中で最も多く市場に流通しているモデルはデイトジャストです。今回はレディースのデイトジャストに搭載されているムーブメントと、よく起こる不具合について紹介いたします。

Cal.2135とCal.2235

現行のレディース/デイトジャストに搭載されているムーブメントはCal.2235です。1999年から採用されるようになりましたが、それ以前に使用されていたムーブメントはCal.2135です。ムーブメントが新しくなり、メンテナンス性の向上、ひげゼンマイが平ひげ※1から巻き上げひげ※2になったことで姿勢差の影響が少なくなり、精度が安定するようになりました。
ムーブメントは大きく変更されましたが、外観には大きな変更点がありません。裏蓋を開けずに見分ける方法は、時間合わせの際にCal.2135はリューズを手前から奥に回した際、針が時計回りに回転します。対してCal.2235は、反時計回りに回転します。
※1 ひげゼンマイの名称で、外端部分も含めてすべて平らなひげゼンマイ。
※2 渦巻き状のひげゼンマイの外周部分を持ち上げ、持ち上げた部分から約270°ぐらいのところでひげ持ちに固定したもの。同心状に伸縮するため、等時性が高まり、精度を出すことができる。時計職人ブレゲが発明したことからブレゲひげとも呼ばれる。

 

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ロレックス/デイトジャスト/69173/Cal.2135
1984年から1998年まで製造されたモデルです。これ以前のモデルではプラスチック風防が取り付けられていましたが、サファイアクリスタルガラスになりました。搭載キャリバーはCal.2135。

 

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ロレックス/デイトジャスト/79174/Cal.2235
1999年~2004年まで製造されたモデル。搭載キャリバーがCal.2235に変更になり、安定性が向上しました。2003年ごろからサファイアクリスタルガラス6時位置に王冠の透かしが入るようになりました。

 

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ロレックス/デイトジャスト/179174/Cal.2235
2004年~現在まで製造されているモデル。搭載キャリバーはCal.2235です。ケースラグが鏡面仕上げになり(それまでのモデルはヘアライン仕上げ)、フラッシュフィットとブレスレットが一体型(それまでのモデルはバネ棒を外すと分離する仕様)になり、ブレスレットの駒が一続きに見えるコンシールドクラスプの採用により、高級感が増しました。ブレスレットの中央パーツが無垢になり(以前は中空)、堅牢性が増しました。
ステンレススチールとピンクゴールドのコンビモデルが新しくラインナップに加わりました。

 

Cal.2235によく起こる不具合

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Cal.2235に多い不具合として、リューズ操作(時刻合わせ)ができない、リューズの引き出しの感覚が無くなってしまう(引き出しがスカスカな状態)があげられます。
この原因として、オシドリという部品の破損が考えられます。オシドリはゼンマイの巻き上げ/時刻(日付)合わせの切り替えスイッチの役割を担っていて、長期間の使用による経年劣化でピンが折れたり抜けたりすることで部品同士の噛み合わせが悪くなり、リューズ操作ができなくなります。

 

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新品のオシドリです。

 

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(矢印部分)ピンが折れてしまったオシドリです。

 

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ピンが抜けてしまったオシドリです。

 

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正常なオシドリの切り替わりです。

 

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オシドリのピンが折れてしまい、裏押さえとの連結が外れ、リューズを引いてもカレンダー早送り位置・針回し位置にリューズが固定されず、手ごたえがスカスカした状態になっています。

 

深刻な故障が起こってしまう前に……

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破損して脱落した部品が歯車間に混入することで、時計自体が止まってしまうトラブルが起こる可能性もあるため、リューズ操作の違和感を感じたら早めのメンテナンス(内部点検)をお勧めいたします。 

  
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時計修理技術者コラムVol.25 外装の素材について

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時計ケースの素材

時計の外装、特にケースに必要な機能は、ムーブメントを外的環境から保護する(耐食性、耐傷性、防水性)ですが、さらに商品としての魅力を演出する装飾性という要素も加わっています。
18世紀の時計産業は、マリンクロノメーター(海洋精密時計:船舶上で使う目的で作られ、揺れる船上でも正確な精度を刻むことができる時計)の開発と、王侯貴族のための高級時計の制作が中心でした。貴族にとって高級時計の所持は大きなステイタスだったため、金やプラチナ、銀などの貴金属が多く用いられてきました。
その後19世紀になるとスイスの時計産業は、より大きな市場獲得をめざしイギリスや欧州大陸全体の大衆消費者のニーズを研究するようになります。その結果、安価な時計が大量に生産されるようになり、時計の使用領域も大きく広がりケースの素材も多様化することになります。
今回は時計ケースの素材に使用されている金属に関して紹介していきます。

ステンレススチール

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ロレックス/サブマリーナ/114060
ステンレススチールとは、STAIN(汚れ・さび)LESS(無し)という、その名の通り、汚れやさびに強い金属です。鉄(Fe)の含有量が50%以上で、クロム(Cr)を10.5%以上含む合金で、使用されている時計本数が最も多い素材です。
※ステンレススチールに関しては時計修理技術者コラムVol.2を参照。

 

貴金属

貴金属(Precious Metal)とは、金(Au)、銀(Ag)、プラチナ=白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)の8つの元素を指します。希少な金属で、耐食性を有するのが特徴です。時計のケースとしては金、銀、プラチナが使用されます。※一部メッキにロジウムが使用されることがあります。
純度はK(Karat)で表記されます。純金とは純度が99.99%以上の物を指し、24Kと表されます。数字が減ることで純度が落ち、別の金属が混ぜられます。時計を含むアクセサリー類には18Kが使われることが多く、その理由としては24Kは柔らかく傷つきやすいため、強度を増すことで実用的にしているのです。
混合する元素の配合量によって色味が変わるため、金に関しては色彩を使い分けて使用されています。

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18Kイエローゴールド
ロレックス/ヨットマスター/16628
純金75%、純銀15%、純銅10%の割合で合金化したもの。

 

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18Kピンクゴールド
ロレックス/デイトジャスト/179175
純金75%、純銀10%、純銅15%の割合で合金化したもの。ローズゴールドと呼ばれることもある。

 

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18Kホワイトゴールド
ロレックス/デイデイトⅡ/218239
純金75%、純銀もしくはパラジウム、ニッケルなどを25%の割合で合金化したもの。ホワイトゴールドという名称ですが、白金=プラチナとは別の金属、プラチナの代替品としてホワイトゴールドが開発されました。

 

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貴金属はそのものの純度の刻印を入れることが一般的で、1,000分率の刻印がされていることが多いです。18Kであれば、75%純金のため、750と刻印されます。プラチナなどは純度に応じてPt950(95%プラチナの意)などで表記されます。

チタン

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(前)パネライ/ルミノールマリーナ/PAM00177
(後)ブルガリ/チタニウム/TI38TA
チタン=チタニウム(Ti)とは、元素番号22の元素。ステンレスに比べ約45%軽く、プラチナや金と同等程度の強い耐食性を持っています。(汗や海水による腐食に非常に強く、さびにくい。)また、金属アレルギーを引き起こさない(人体適合性があり、イオン化したニッケルやクロムなどが皮膚に浸透して引き起こす金属アレルギーが起こりにくい)という特徴があり、時計のケースに非常に適しています。
時計ケースに使用されるようになった1970年代には加工しにくく調達コストが高い(ステンレスの約10倍)という課題がありましたが、技術開発により克服し1980年代以降は新素材として脚光を浴びるようになりました。

 

超硬質素材

 

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シャネル/J12/H2126

審美性が追及されるため、鏡面仕上げを施すことが多いケースは傷がつくと目立ちやすいという問題を抱えています。これまで挙げた素材でも合金化組成を工夫したり、表面処理技術を開発して強度や固さを増しているとはいえ、長期間の仕様では傷がつくことは避けられません。そこで、対摩傷性の良さを生かせる素材として【超硬合金】や【セラミック】があります。欠点としては、強い表面光沢や色味が付くため、特定のデザインや用途に限られてしまうことが挙げられます。
※セラミックは磨くことができません。
※超硬合金は表面加工の種類によっては磨くことができない場合がございます。

素材に応じた研磨法

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今回紹介した素材の特徴を理解していても、実際に研磨をする場合は様々な注意点があります。例えば、同じ18Kでも、イエローゴールド、ピンクゴールド、ホワイトゴールドでは硬さが微妙に異なります。さらには各ブランドや使用環境によっても一つ一つ違ってくるため、時計もそれぞれに合わせた磨き分けが必要になります。時計修理専門店WATCH COMPANYでは熟練の技術者があらゆる素材、ブランドのお時計も完璧に磨き上げます。時計の傷が気になるようになったらぜひ無料見積りをご利用ください!
※新品仕上げ16,200円(税込)~、オーバーホールとセットでお申し込みの場合は割引価格10,800円(税込)~になります。

 

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時計修理技術者コラムVol.24 クロノグラフ12時間計の不良について~オメガCal.861編~

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クロノグラフの動作不良

クロノグラフ(ストップウォッチ機能)の時計は、3針の時計に比べて部品数が多くなっています。部品が多いと不具合が起こる可能性も高くなります。今回はオメガのスピードマスター プロフェッショナル/Speedmaster Professionalに使用されているCal.861(現行モデルは3570-50、3573-50などに搭載されているCa.1861)の12時間計の不具合をご紹介いたします。

スピードマスター プロフェッショナル

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オメガ/スピードマスター プロフェッショナル/3891-50/Cal.861
1957年にスピードマスターの1stモデルが発表され、1965年にNASAの公式時計となりました。1969年には世界で初めて月に降り立った時計(ムーンウォッチ)として知名度を獲得しました。数々のモデルチェンジを経て現在のCal.1861へ進化しました。初代のCal.321、次世代のCal.861も全てレマニア製のムーブメントをベースにしています。

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Cal.861

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Cal.1861

12時間計の不具合

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Cal.861における12時間計の動作不良の原因としては、
①歯車の軸(ほぞ)折れによる動作不良
②香箱真に付属するカナ(歯車の上、または下についている児車)のフリクションスプリングの役割をする板バネの強弱によるもの
③12時間計ストップレバーの状態不良
が考えられます。その中でも②について以下に説明していきます。

 

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12時間計車を駆動させるカナです。

 

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歯先をつぶさない強さで規制しているので、強い力がかかると動いてしまいます。

 

12時間計車はクロノグラフを作動させた時にストップレバーが離れた香箱と連動して動作するようになっています。また、クロノグラフを止めた時はストップレバーにより12時間計、その隣の香箱のカナの動きを止めています。
その際にポイントとなるのが、香箱裏のカナを抑えている板バネの強さになります。
板バネが強すぎる場合、12時間計ストップレバーが12時間計車と当っていますが、香箱と連動してカナが動いてしまうため、クロノグラフを未作動の状態で12時間計が動いてしまいます。
逆に板バネの押さえる力が弱い場合はクロノグラフを作動しても12時間車は香箱と連動して動作しなくなります。

 

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オーバーホールの際、香箱は完全に分解するため、板バネは必ずチェックして適正な強さで抑えることができるように調整しています。

 

クロノグラフはオーバーホールの通常料金も高く設定されていて、部品も多いため修理代金が高額になりがちです。深刻な破損が起こる前に、動作の異常を感じたらぜひご相談ください!

 
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POWER Watch 2017年5月号(No.93)に当店が紹介されます!

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3月30日に発売されるPOWER Watch2017年5月号(No.93)の【全国時計修理優良店ガイド】の特集に当店が紹介されています!

 

また、腕時計の教科書~第4回 カレンダー機構~にて取材協力、写真提供をさせていただきました。

意外と知られていない【カレンダーの操作禁止時間帯】について紹介させていただいております。操作禁止時間帯については当店ブログ時計修理技術者コラムVol.7 カレンダー送りの構造と不具合~Cal.ETA7750編~でも紹介させていただいております。是非チェックしてください!

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時計修理技術者コラムVol.23 クォーツクロノグラフの針位置修正について

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クォーツクロノグラフの針ずれ

クロノグラフとはストップウォッチを搭載した腕時計を表しますが、現在市場に流通しているクロノグラフは大きく分けて機械式とクォーツ式に分類することができます。クォーツクロノグラフのお時計で、お問い合わせや相談を多く頂戴する、「針がずれてしまった」という不具合ですが、実はクォーツクロノグラフ時計のほとんどがお客様自身で針の位置を調整できる機能を備えています。今回はクォーツクロノグラフの針位置修正の方法をご紹介いたします。

クォーツクロノグラフの針ずれとは

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正常な針位置
 

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針ずれ状態

クォーツクロノグラフの針は衝撃や磁気の影響を受けやすく、ふとした拍子に針が0位置からずれてしまうことがあります。※リューズ操作の際にボタンが押されてしまいずれる場合もあります。
針がずれてしまった際は、リューズの引き出しと、2時位置のスタートボタン、4時位置ストップ(リセット)ボタンの操作によって修正できます。※電池が切れて動かない場合は、先に電池交換を行う必要があります。調整方法の一部は下記の通りとなります。

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クォーツクロノグラフの各針の名称、リューズの操作方法です。
ブルガリ/レッタンゴロ クロノグラフ/Cal.ETA251.471

 

Cal.ETA251.471

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ブルガリや、ロンジンなど、多くのブランドで使用されているムーブメントです。通常モデルの他にもクロノ分針や、スプリットセコンドを搭載したモデルが存在します。特殊モデルはボタンに対応して修正する針が変わりますが、基本操作は同じです。

 

操作方法は、
リューズ0段引き(引き出していない)状態で、通常のクロノグラフ機能
リューズ1段引きで、
・ストップボタン 30分計針
リューズ2段引きで、
・スタートボタン クロノグラフ秒針
・ストップボタン 1/10秒計針
を調整することができます。

Cal.RONDA5040

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タグホイヤーのアクアレーサーなどに使用されているムーブメントです。カレンダー表示位置の違いなど、様々な派生ムーブメントが存在します。

 

操作方法はリューズを2段引いた状態でスタートボタンとストップボタンを長押し(3秒以上)すると、クロノグラフ秒針が1周します。
その状態で、スタートボタンを押すとクロノグラフ秒針の調整を行うことができます。
ストップボタンを押すと修正対象の針が1回転するので、目的の針が回転したらスタートボタンで対象針の位置調整を行うことができます。

故障かな?と思ったら……

今回ご紹介した修正方法以外にも搭載されているムーブメントによって様々な修正方法が存在します。
セイコーシチズンなど、国産の時計メーカーではホームページ上に各時計の取扱説明書が掲載やダウンロード可能になっています。
時計内に深刻な破損や不具合が起こっている場合は、修正を行っても改善されない場合があります。操作不良が起こったらぜひ無料の見積もりサービスをご利用ください!

 
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時計修理技術者コラムVol.22 新品仕上げについて~ヘアライン仕上げ編~

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新品仕上げのススメ

以前のブログで、新品仕上げ(傷取り)の中でも鏡面仕上げについて時計修理技術者コラムVol.18 新品仕上げについて~鏡面仕上げ編~でご紹介いたしました。今回はヘアライン仕上げについてご紹介いたします。

ヘアライン仕上げとは

ヘアライン仕上げ(hairline finish)とは、金属の表面処理の一種で、単一方向に細かい線状の模様を入れる加工方法を指します。傷を入れることで、つや消しの効果があり、金属の落ち着いた雰囲気が出ます。また、前回ご紹介した鏡面仕上げと組み合わせることで造形のメリハリを表現することができます。
長年使用すると使用傷が増え、ヘアラインが薄れてしまったり、鏡面仕上げとヘアラインの境界がはっきりしなくなると、デザイン性も落ちてしまいます。
ロレックス/デイトジャスト(Ref:16233)のジュビリーブレスレットを例に磨きの工程を見ていきます。

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ロレックス/デイトジャスト/Ref.16233/搭載ムーブメントCal.3135
1945年ごろ、デイト表示機能を搭載した「デイトジャスト」を発表。
1955年、0時ごろに瞬時に日付が切り替わるデイトジャスト機構を発表。この機構はロレックスの3大発明の一つと数えられています。カレンダー表示を見やすくした「サイクロップレンズ」を搭載し、実用時計として広く愛用されるようになりました。
Ref.16233は1988年ごろ~2006年まで製造され、後継機のRef.116233の製造開始により製造終了となりました。

 

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ジュビリーブレスレットのセンターリンク3列を磨いた後、鏡面部分に傷がつかないようにテープを貼り、マスキングします。

 

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表面の固い、スコッチフラップバフで、1駒ずつ丁寧にヘアラインを入れていきます。マスキングテープ部分を避けて、押し付ける力を細かく調整しながら行います。

 

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手前の列のヘアラインを入れました。つや消しをしたことで、センターリンク3列の鏡面が引き立ちます。

 

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仕上げが完了したブレスレットです。鏡面部分の重厚さと、ヘアライン仕上げのシャープな印象にメリハリがつき、ジュビリーブレスの特徴を再生することができました。

 

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鏡面仕上げ同様に、ヘアライン仕上げにおいても、時計の形状に合わせて様々な工具を使い分けています。

 

ロレックス/ジュビリーブレスレットバックル部分の仕上げ

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before

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after

 

新品仕上げを実施することで、鏡面部分とヘアライン部分のメリハリのある、購入時の輝きがよみがえります。オーバーホールと一緒に是非新品仕上げもご依頼ください!

 
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時計修理技術者コラムVol.21 ロレックスのGMT機能のムーブメントについて~ロレックスCal.3185、Cal.3186編~

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GMT機能とは

GMTGreenwich Mean Time)とは、グリニッジ天文台(経度0度)における平均太陽時を指しています。イギリスの標準時で、グリニッジ標準時(平均時)と訳されています。近年は協定世界時UTC)と同義語として扱われています。
腕時計においては第2時間帯の表示ができる機能として定着してきました。今回はロレックスのGMT機能搭載の時計(GMTマスター、GMTマスターⅡ、エクスプローラーⅡ)の中からCal.3185、Cal.3186を例に取ってGMT機能に起こる不具合を紹介します。

GMTマスターⅡの特徴

1950年代にGMTマスターのファーストモデル(6542)が発表され、1999年にGMTマスター(16700)が製造終了となりますが、1983年には3つのタイムゾーンを知ることができるGMTマスターⅡ(16710など)が発表され、現行のモデル(116710など)でも特徴が受け継がれています。
GMTマスターⅡの特徴としては、短針と24時間針の2か国表示に、ベゼルの回転を組み合わせることで第3か国目の時刻を知ることができます。また、GMTマスターⅡからは、短針を単独で動かせるようになり、操作性が向上しました。

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ロレックス/GMTマスターⅡ/16710
1983年に発表されたモデル、2005年に後継機の116710が発表され生産終了となりました。

 

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ロレックス/GMTマスターⅡ/116710
2005年に発表された後継機。ベゼルディスクがセラミック製になりました。ベゼルのクリックは30分ごとに移動するようになり、回転ベゼルの構造も進化しています。

 

GMTマスターⅡのムーブメントと不具合

GMTマスターⅡは当初はCal.3185が採用されていました。その後、Cal.3186へ受け継がれ、歯車や部品の数が増え、短針を単独で操作した際に起こる他の針ずれや午前、午後での短針のずれが小さくなり、日々の使用への支障が減りました。

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Cal.3185
短針を取り付ける筒車の下に24時間車を加えることで、リューズを一段引いた状態で短針のみを操作できるようになりました。

 

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Cal.3186
Cal.3185では24時間車に短針を操作する機能が集中していましたが、部品数を増やしたことで整備性が上がり、部品自体も大きくなったことで時針の位置の精度が上がりました。

 

GMTマスターは短針を単独で操作する機会が多いため、「短針の動作不良」や、「針ずれ」などの不具合が起こります。短針を操作するアワークリックの破損による故障が多く見受けられます。

 

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新品のアワークリックです。

 

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破損したアワークリックです。アワークリックが破損した状態で操作すると短針がするすると動いてしまい、1時間刻みで動くクリック感がなくなります。

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アワークリックは日常的に使用していても破損する恐れがある部品で、現在では改良された部品が使用されています。

アワークリックが破損してしまった場合は、オーバーホールの際に新しい部品と交換することで動作の修復が可能です。動作に異常を感じたらぜひご相談ください!

 
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