WATCH COMPANY公式ブログ~時計修理技術者コラム~

時計修理専門店WATCH COMPANYの公式ブログです。

時計修理技術者コラムVol.31 歯車の不良と摩耗

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摩耗

定期メンテナンスや故障の際に、歯車を交換する理由として最も多いものは、歯車のほぞ(歯車の中心軸、幹の部分)の摩耗によるものです。 状態によって摩耗の程度の差はありますが、油切れ状態で長期間使用が続くと、歯車のほぞと、ほぞが入る穴(ほぞ穴)の接触部分の摩擦が大きくなり、歯車のほぞが削れてしまいます。 また、部品が削れた際に発生する金属粉がムーブメント全体に広がり、多くの部品に損傷を与えることがあります。

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Cal.ETA2892/3番車
歯車のほぞが少し摩耗している状態です。この程度の摩耗であれば時計は動作するため、通常使用では気づくことはできません。ほぞを磨いて修正することで部品の再利用が可能です。

 

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Cal.ETA2892/3番車
ほぞが大きく摩耗している状態です。この段階になると、歯車の回転にがたつきが起こり、時計の精度不良や、頻繁に止まる原因となります。部品の交換が必要な状態です。

 

変形、破損

落下や着用中にぶつけてしまうなど、外部からの衝撃により、歯車のほぞが折れる、曲がるなどの不具合が起こることがあります。 ほぞが折れた場合、時計は不動になるため、すぐに不具合に気が付くことができます。 しかし、ほぞの曲りが起こった場合は、時計はそのまま動作することもあります。また、部品の交換を必要とせず、修正によって改善するできる場合もあります。 ただし、針が取り付けられる4番車や、クロノグラフ車などは、歯車が固定される部分から、針が取り付けられる先端までのほぞが長いため、衝撃などにより曲がりやすく、曲がってしまうと、針が傾いてしまうことがあります。 針が傾いた状態で回転をすると、文字盤に針が擦れて、文字盤を傷つけてしまう恐れがあります。f:id:watchfan1999:20170718164553j:plain

Cal.ETA7750/クロノグラフ

 

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Cal.ETA7750/クロノグラフ
クロノグラフ車のほぞが折れています。歯車をほぞ(軸)で支えて固定することができないため、不動になります。

 

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Cal.ETA7750/クロノグラフ
ほぞの先端が曲がっています。この状態で先端に針を取り付けると、他の針や文字盤に擦れてしまい、傷がつく原因になります。

  

歯車のかけ

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 Cal.ETA6497/香箱
特殊なケースとして、ゼンマイ切れの際に、切れたゼンマイの力が一気に解放され、ゼンマイを収める部品(香箱)の歯が曲がる、かけるなどの不具合が起こることがあります。 また、ゼンマイの動力を伝達する輪列(2番車、3番車)にまで衝撃が伝わると、歯車が破損してしまうこともあります。

 

メンテナンスは部品の摩耗が進んでしまう前に!

歯車一つをとっても、様々な不具合が起こります。 定期的なメンテナンスをしていただくと、常にムーブメントの状態が良好になり、お時計を永くご愛用いただくことができます!

 

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時計修理技術者コラムVol.30 リューズの操作不良、カレンダー不良について~ロレックスCal.2135編~

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ロレックス/レディース時計のムーブメント その2

ロレックスのレディース時計に使用されているムーブメントに関して、前回、時計修理技術者コラムVol.26 リューズの操作不良~ロレックスCal.2235編~にて、Cal.2235について紹介しましたが、今回はCal.2235より以前に搭載されていたCal.2135について紹介いたします。

Cal.2135について

Cal.2135はレディースのデイトジャスト69174、69173系統のモデルに搭載されているムーブメントです。1980年代初めから、1998年ごろまで製造されました。

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Cal.2135カレンダー早送り車初期(前者)、後期(後者)
Cal.2135は製造された初期と後期では、カレンダーを操作する内部部品が変更されています。 初期型の場合は、日付を早送りするときに順方向と逆方向、両回転することができました。 後期型の場合は順方向のみ進ませることが可能です。

 

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Cal.2135カレンダー送り車初期(前者)、後期(後者)
カレンダー送り車も改良されて、誤操作による部品の破損が少なくなりました。

Cal.2135によく起こる不具合

Cal.2135によく起こる不具合は、

 

1.リューズ操作がしづらい、またはできない

2.日付がダイヤルの窓枠内で半目になる

 

この2つの不具合の原因は、部品の破損や摩耗によるものです。

 
1.リューズ操作がしづらい、またはできない

リューズ操作に関しては、ゼンマイの巻き上げや、時刻合わせをするときに使われるツヅミ車の歯先が削れてしまったことが原因です。

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新品のツヅミ車です。

 

f:id:watchfan1999:20170704164955j:plain歯先が削れてしまったツヅミ車です。

 

2.日付がダイヤルの窓枠内で半目になる

日付が半目になってしまう原因はカレンダーを送るカレンダー車の歯がかけてしまったことによるものが多いです。

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カレンダー車の歯先です。

 

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カレンダー車の歯先がかけてしまっています。

 

時計のトラブルに遭わないために

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上記のような部品状態になってしまった際は、部品の交換とオーバーホールで症状は改善することができます。しかし、ロレックスの部品は他ブランドに比べ、高額になります。また、破損した部品の破片が機械内部に混入することで他の部品にも悪影響を与えてしまうことがあります。 それを避けるために大切なことは

 

「カレンダー早送り禁止時間帯」にカレンダー操作を行わないことが最も大切です。

 

カレンダー早送り禁止時間帯はカレンダーが切り替わる前後3時間ほどを指しています。この時間帯は、カレンダーを送るために関連部品の歯車同士が噛み合っている状態になるため、その状態で無理にカレンダーの早送りを行ってしまうと該当部品が破損してしまいます。 そのため、当店ではカレンダーを早送りする場合は時計上の時間をまず6時に合わせてからカレンダーの早送りすることを推奨させていただいております。

 

万が一リューズの操作に不具合を感じたら、ぜひ無料のお見積もり相談をご依頼ください!

 
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時計修理技術者コラムVol.29 時計内部のごみ、水入り

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止まりの原因

時計の機械内部にごみなどが入り込み、止まりの原因となることがありますが、なぜオーバーホールをしてから裏蓋を開けたことが無いのにごみや湿気が入ってしまうのでしょうか?

空気の膨張率

日中空気を入れたはずのボールが、気温が下がった朝方に少し縮んでいることがあります。 これはボール内部の空気が冷やされて体積が小さくなったため起こっている現象です。 時計でも同じ現象が起きています。 強固なケースに守られた時計の場合だと、時計が変形するのではなく、わずかな隙間からごみや湿気を吸い込んでしまう恐れがあります。 ごみや湿気を吸い込んだ状態で腕に付けてしまうと、時計内部の温度が上がり、内部に汚れや湿気を残して膨張した空気だけを吐き出すことになります。 このような吸引作用は時計内部の温度と外気にに差ができるたびに行われています。

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ロレックス/デイトジャスト/116234/オイスターケース
リューズを開放したままの状態、だと外気をそのまま吸い込んでしまう状態となる。また、時計ケースとサファイアクリスタルガラスを固定するクリスタルワッシャー(ガラスパッキン)が潰れてしまうと、そこからごみや湿気が入ってしまう原因となる。

 

 

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オメガ/スピードマスターシューマッハモデル/3510-61
スポーツモデルという頑丈なイメージを持つオメガのスピードマスターだが、実際は3気圧/生活防水程度の機能しか持っていない。アウトドアなどで使用することで、水入りしてしまうケースが非常に多い。リューズやプッシャー(クロノグラフプッシュボタン)からのごみ、湿気入りの他、ベプラスチック風防からの混入も多く見受けられる。ひびが入ってしまった風防は早めの交換をお勧めします。裏蓋に関してはスナッチバック(圧入方式)を採用しているモデルは、固定しているテフロンやプラスチック製パッキンの歪みなどから異物が混入してしまう。

 

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フランクミュラー/カサブランカ/2852
フランクミュラーが展開しているほとんどのモデルがガラスに関しては接着方式を採用しているため、経年劣化によりぼろぼろになってしまうと、内外気温の差によって接着面からの異物混入をしてしまうことになります。定期メンテナンスのタイミングでガラスの接着を再度行うことで、気密性を保つことができます。裏蓋はビス止め式を採用しているため、パッキンが劣化しているとそこから内部に汚れが入ってしまう原因となります。

 

ごみ入りをしてしまうと……

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0.1㎜程度の大きさの歯車が噛み合って動作しているムーブメントは、0.01㎜程度のごみやほこりでも止まりの原因となってしまいます。 ごみや汚れによってお時計が止まってしまう前に是非定期的なメンテナンスを!

 
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時計修理技術者コラムVol.28 クロノグラフ12時間計積算計の不良について~Cal.ETA7750編~

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クロノグラフの動作不良

クロノグラフ(ストップウォッチ機能)の時計は、3針の時計に比べて部品数が多くなっています。部品が多いと不具合が起こる可能性も高くなります。以前、時計修理技術者コラムVol.24 クロノグラフ12時間計の不良について~オメガCal.861編~にて12時間積算計の不具合を紹介しましたが、今回は構造が異なるCal.ETA7750に起こる不具合を紹介いたします。

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ブライトリング/クロノマットエボリューション/A13356
2004年に発表されたETA7750を搭載するモデルです。前身のクロノマット2000のケースサイズが39㎜だったのに対し、43.7㎜という大型なケースを採用していました。イタリア空軍の公式クロノグラフとしてもともと開発されていたため、様々な箇所にパイロットの希望が反映されています。回転ベゼル上には「15」「30」「45」の文字が表示されたライダータブが取り付けられていますが、(残り時間を計測する際など)必要に応じて入れ替えができるようになっています。 2009年にはブライトリング自社ムーブメントキャリバー01を搭載したクロノマット44に受け継がれました。
※クロノマット44は修理の受付対象外モデルとなります。

12時間計の不良原因

Cal.ETA7750の不具合の原因としては、 ①ストップレバー先端部の摩耗、劣化によって12時間計積算車を止められない ②12時間計積算車自体の不良・破損によるもの が挙げられます。

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①ストップレバー先端部の摩耗、劣化
ETA7750の12時間計ストップレバーの素材はプラスチック(樹脂)が使用されています。ストップ時、リセット時に離れていたストップレバーが金属の歯車(12時間計積算車)を規制しています。長期間の使用によって車と当る先端が摩耗すると歯車を規制できなくなります。摩耗による不具合はストップレバーの交換にて対応することができます。

 

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②12時間計積算車自体の不良・破損
12時間計積算車自体の不良とは、真鍮部分の歯車と、ハートカムが付いているホゾ(軸)部分が分離してしまうというものです。歯車が分離してしまった場合は12時間計積算車を交換して対応します。

 

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クロノグラフを作動させていない状態で12時間計が動作してしまう症状の原因は、上記が大半を占めます。症状が出てしまった場合は専門店に修理を出されることをお勧めいたします。

 

  
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時計修理技術者コラムVol.27 時計の裏蓋パッキン

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時計の防水性

時計の防水性能は、ケースの構造上の隙間(ミドルケースと裏蓋、ミドルケースとベゼルなど)をできる限り少なくして水分が入らないようにすることで保つことができます。今回は、時計の防水性能において重要な役割を担っているパッキンに関して紹介します。

パッキンとは

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裏蓋パッキンとは主にゴム製で、丸型もしくは平型のリング状の部品です。裏蓋を閉める際の圧力で押しつぶされることでケースと裏蓋の間の隙間を埋めることができ、密閉性を保つことができます。一般的に腕時計の修理項目での【パッキン交換】は裏蓋パッキンの交換を指します。
※プラスチック製やテフロン製のパッキンを採用しているモデルも存在します。

パッキンの劣化

優れた弾力性や伸縮性が特徴のパッキンですが、長期間の使用によると、素材の変質により弾力性が失われ、硬化してしまいます。パッキンが劣化してしまうと、ケースの密閉性が失われ、防水不良が起こります。また、その状態で使用を続けると、汚れや汗が隙間に入ってしまい、ケースや裏蓋が腐食を起こしてしまう原因となります。

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硬化してしまった(ゴム)パッキンです。

 

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劣化、変形してしまったプラスチック製パッキンです。

 

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ロレックス/エクスプローラー(1016)オイスターケース
上記のようにケースや裏蓋の腐食が大きくなってしまうとパッキンを交換しても防水性能が保持できなくなってしまいます。
腐食が進むとケースそのものの交換が必要になり、メンテナンス費用も高額になります。そのため定期的なメンテナンスを受けていただくことをお勧めいたします。

 

  
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時計修理技術者コラムVol.26 リューズの操作不良~ロレックスCal.2235編~

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ロレックス/レディース時計のムーブメント

ロレックスのレディース時計の中で最も多く市場に流通しているモデルはデイトジャストです。今回はレディースのデイトジャストに搭載されているムーブメントと、よく起こる不具合について紹介いたします。

Cal.2135とCal.2235

現行のレディース/デイトジャストに搭載されているムーブメントはCal.2235です。1999年から採用されるようになりましたが、それ以前に使用されていたムーブメントはCal.2135です。ムーブメントが新しくなり、メンテナンス性の向上、ひげゼンマイが平ひげ※1から巻き上げひげ※2になったことで姿勢差の影響が少なくなり、精度が安定するようになりました。
ムーブメントは大きく変更されましたが、外観には大きな変更点がありません。裏蓋を開けずに見分ける方法は、時間合わせの際にCal.2135はリューズを手前から奥に回した際、針が時計回りに回転します。対してCal.2235は、反時計回りに回転します。
※1 ひげゼンマイの名称で、外端部分も含めてすべて平らなひげゼンマイ。
※2 渦巻き状のひげゼンマイの外周部分を持ち上げ、持ち上げた部分から約270°ぐらいのところでひげ持ちに固定したもの。同心状に伸縮するため、等時性が高まり、精度を出すことができる。時計職人ブレゲが発明したことからブレゲひげとも呼ばれる。

 

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ロレックス/デイトジャスト/69173/Cal.2135
1984年から1998年まで製造されたモデルです。これ以前のモデルではプラスチック風防が取り付けられていましたが、サファイアクリスタルガラスになりました。搭載キャリバーはCal.2135。

 

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ロレックス/デイトジャスト/79174/Cal.2235
1999年~2004年まで製造されたモデル。搭載キャリバーがCal.2235に変更になり、安定性が向上しました。2003年ごろからサファイアクリスタルガラス6時位置に王冠の透かしが入るようになりました。

 

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ロレックス/デイトジャスト/179174/Cal.2235
2004年~現在まで製造されているモデル。搭載キャリバーはCal.2235です。ケースラグが鏡面仕上げになり(それまでのモデルはヘアライン仕上げ)、フラッシュフィットとブレスレットが一体型(それまでのモデルはバネ棒を外すと分離する仕様)になり、ブレスレットの駒が一続きに見えるコンシールドクラスプの採用により、高級感が増しました。ブレスレットの中央パーツが無垢になり(以前は中空)、堅牢性が増しました。
ステンレススチールとピンクゴールドのコンビモデルが新しくラインナップに加わりました。

 

Cal.2235によく起こる不具合

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Cal.2235に多い不具合として、リューズ操作(時刻合わせ)ができない、リューズの引き出しの感覚が無くなってしまう(引き出しがスカスカな状態)があげられます。
この原因として、オシドリという部品の破損が考えられます。オシドリはゼンマイの巻き上げ/時刻(日付)合わせの切り替えスイッチの役割を担っていて、長期間の使用による経年劣化でピンが折れたり抜けたりすることで部品同士の噛み合わせが悪くなり、リューズ操作ができなくなります。

 

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新品のオシドリです。

 

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(矢印部分)ピンが折れてしまったオシドリです。

 

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ピンが抜けてしまったオシドリです。

 

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正常なオシドリの切り替わりです。

 

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オシドリのピンが折れてしまい、裏押さえとの連結が外れ、リューズを引いてもカレンダー早送り位置・針回し位置にリューズが固定されず、手ごたえがスカスカした状態になっています。

 

深刻な故障が起こってしまう前に……

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破損して脱落した部品が歯車間に混入することで、時計自体が止まってしまうトラブルが起こる可能性もあるため、リューズ操作の違和感を感じたら早めのメンテナンス(内部点検)をお勧めいたします。 

  
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時計修理技術者コラムVol.25 外装の素材について

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時計ケースの素材

時計の外装、特にケースに必要な機能は、ムーブメントを外的環境から保護する(耐食性、耐傷性、防水性)ですが、さらに商品としての魅力を演出する装飾性という要素も加わっています。
18世紀の時計産業は、マリンクロノメーター(海洋精密時計:船舶上で使う目的で作られ、揺れる船上でも正確な精度を刻むことができる時計)の開発と、王侯貴族のための高級時計の制作が中心でした。貴族にとって高級時計の所持は大きなステイタスだったため、金やプラチナ、銀などの貴金属が多く用いられてきました。
その後19世紀になるとスイスの時計産業は、より大きな市場獲得をめざしイギリスや欧州大陸全体の大衆消費者のニーズを研究するようになります。その結果、安価な時計が大量に生産されるようになり、時計の使用領域も大きく広がりケースの素材も多様化することになります。
今回は時計ケースの素材に使用されている金属に関して紹介していきます。

ステンレススチール

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ロレックス/サブマリーナ/114060
ステンレススチールとは、STAIN(汚れ・さび)LESS(無し)という、その名の通り、汚れやさびに強い金属です。鉄(Fe)の含有量が50%以上で、クロム(Cr)を10.5%以上含む合金で、使用されている時計本数が最も多い素材です。
※ステンレススチールに関しては時計修理技術者コラムVol.2を参照。

 

貴金属

貴金属(Precious Metal)とは、金(Au)、銀(Ag)、プラチナ=白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)の8つの元素を指します。希少な金属で、耐食性を有するのが特徴です。時計のケースとしては金、銀、プラチナが使用されます。※一部メッキにロジウムが使用されることがあります。
純度はK(Karat)で表記されます。純金とは純度が99.99%以上の物を指し、24Kと表されます。数字が減ることで純度が落ち、別の金属が混ぜられます。時計を含むアクセサリー類には18Kが使われることが多く、その理由としては24Kは柔らかく傷つきやすいため、強度を増すことで実用的にしているのです。
混合する元素の配合量によって色味が変わるため、金に関しては色彩を使い分けて使用されています。

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18Kイエローゴールド
ロレックス/ヨットマスター/16628
純金75%、純銀15%、純銅10%の割合で合金化したもの。

 

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18Kピンクゴールド
ロレックス/デイトジャスト/179175
純金75%、純銀10%、純銅15%の割合で合金化したもの。ローズゴールドと呼ばれることもある。

 

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18Kホワイトゴールド
ロレックス/デイデイトⅡ/218239
純金75%、純銀もしくはパラジウム、ニッケルなどを25%の割合で合金化したもの。ホワイトゴールドという名称ですが、白金=プラチナとは別の金属、プラチナの代替品としてホワイトゴールドが開発されました。

 

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貴金属はそのものの純度の刻印を入れることが一般的で、1,000分率の刻印がされていることが多いです。18Kであれば、75%純金のため、750と刻印されます。プラチナなどは純度に応じてPt950(95%プラチナの意)などで表記されます。

チタン

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(前)パネライ/ルミノールマリーナ/PAM00177
(後)ブルガリ/チタニウム/TI38TA
チタン=チタニウム(Ti)とは、元素番号22の元素。ステンレスに比べ約45%軽く、プラチナや金と同等程度の強い耐食性を持っています。(汗や海水による腐食に非常に強く、さびにくい。)また、金属アレルギーを引き起こさない(人体適合性があり、イオン化したニッケルやクロムなどが皮膚に浸透して引き起こす金属アレルギーが起こりにくい)という特徴があり、時計のケースに非常に適しています。
時計ケースに使用されるようになった1970年代には加工しにくく調達コストが高い(ステンレスの約10倍)という課題がありましたが、技術開発により克服し1980年代以降は新素材として脚光を浴びるようになりました。

 

超硬質素材

 

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シャネル/J12/H2126

審美性が追及されるため、鏡面仕上げを施すことが多いケースは傷がつくと目立ちやすいという問題を抱えています。これまで挙げた素材でも合金化組成を工夫したり、表面処理技術を開発して強度や固さを増しているとはいえ、長期間の仕様では傷がつくことは避けられません。そこで、対摩傷性の良さを生かせる素材として【超硬合金】や【セラミック】があります。欠点としては、強い表面光沢や色味が付くため、特定のデザインや用途に限られてしまうことが挙げられます。
※セラミックは磨くことができません。
※超硬合金は表面加工の種類によっては磨くことができない場合がございます。

素材に応じた研磨法

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今回紹介した素材の特徴を理解していても、実際に研磨をする場合は様々な注意点があります。例えば、同じ18Kでも、イエローゴールド、ピンクゴールド、ホワイトゴールドでは硬さが微妙に異なります。さらには各ブランドや使用環境によっても一つ一つ違ってくるため、時計もそれぞれに合わせた磨き分けが必要になります。時計修理専門店WATCH COMPANYでは熟練の技術者があらゆる素材、ブランドのお時計も完璧に磨き上げます。時計の傷が気になるようになったらぜひ無料見積りをご利用ください!
※新品仕上げ16,200円(税込)~、オーバーホールとセットでお申し込みの場合は割引価格10,800円(税込)~になります。

 

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