WATCH COMPANY公式ブログ~時計修理技術者コラム~

時計修理専門店WATCH COMPANYの公式ブログです。

時計修理技術者コラムVol.38 巻き上げの不具合~ロレックスCal.3000系編~

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手巻きの不具合

お時計を長期間使用していると、手でゼンマイを巻き上げる際、本来よりも手巻きが重くなってしまうことがあります。その原因としては、自動巻き機構の不具合が原因であることが多いですが、一番受け(一受)の摩耗が原因の場合もあります。 一番受けの摩耗が原因で手巻きが重くなってしまう症状は以前時計修理技術者コラムVol.15 一番受けの摩耗が引き起こす不具合~Cal.ETA2892編~にて紹介しましたが、今回はロレックスのCal.3000系のムーブメントを例にご紹介します。

一番受け(一受)の摩耗

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ロレックスCal.3000系ムーブメントの一番受けには、ゼンマイを巻き上げる歯車として、丸穴車、スライディングギア、スライディング中間車、角穴車の4つの歯車が取り付けられています。 油切れが原因で手巻きが重くなった場合、オーバーホールを行うことで、症状が改善します。 油切れの状態で、使用が長期間に渡ると、一番受けのスライディング中間車が収まるダボ(軸)が徐々に削れてしまい、さらに手巻きの違和感(ごりごりとした感触)が大きくなります。

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【通常の一番受けと、摩耗した一番受け】

写真のような状態になってしまった場合、部品の修正では動作は改善されません。 一番受け自体を交換しないと、手巻きの違和感が解消されることはありません。

手巻きに違和感を感じたら……

 

手巻きに違和感を感じたら今回紹介した一番受けに摩耗が生じている可能性があります。ロレックスは自社ムーブメントを搭載しているため、一番受けもロレックス専用のものになりますが、一般に流通している部品ではないため、入手が非常に困難(入手できても非常に高額)なため、不具合が発生する前にメンテナンスを受けられることをお勧めいたします!

 

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時計修理技術者コラムVol.37 ロレックスの新品仕上げ~エクスプローラー/114270ベゼル・裏蓋編~

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ロレックスの仕上げ

ロレックスの人気スポーツモデルと言えば、シンプルで堅牢なデザインが特徴的なエクスプローラーですが、今回はエクスプローラー(Ref:114270)のベゼルと裏蓋の仕上げについて紹介いたします。

 

 

ロレックス/エクスプローラー/114270

搭載ムーブメントCal3130:極限状況に挑む探険家たちが精度と耐久性に絶大な信頼を寄せてきた、ロレックスのスポーツモデルの中でも最も知名度が高いモデル。リファレンスNo.114270は2001年4月バーゼルフェアでデビューした時計で、2010年に後継となる214270が発表されましたが、現行の214270よりもシャープなケースの形状などから生産が完了した後も根強いファンが多い。

 

エクスプローラーのベゼルはスムースベゼルと呼ばれるポリッシュ(鏡面)タイプの仕上げになっています。裏蓋と同じく、一見シンプルで仕上げも簡単そうですが、面の形状を崩さず傷を取るには熟練の技術に加え、特殊な工具を必要とします。

 

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新品仕上げ前のベゼル、裏蓋です。鏡面部分に傷や打痕があり、バフ(柔らかい素材で磨く方法)だけで傷を消そうとすると鏡面部分がぼこぼこになってしまう恐れがあります。

 

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 特殊な工具を使い、傷を取ることができました。ベゼルの鏡面部分とトップの細い平面のバランスが崩れないように、形状を整えながら行います。

 

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 この後、鏡面磨きとヘアライン仕上げ(ベゼル上部、鏡面部分下)を行い※写真参照、本来のメリハリのあるベゼルと裏蓋に仕上げることができました。 

磨き前と磨き後では、時計が見違えるように甦ります!定期メンテナンスの際は是非新品仕上げも一緒に受けていただくことをお勧めいたします!

 
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時計修理技術者コラムVol.36 自動巻き不良の原因と対応~Cal.ETA7750編~

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自動巻き時計の不具合

自動巻きの時計で起こる不具合の中でも特に多い修理内容は『自動巻き部分の不良』です。今回はオメガやブライトリングなどのクロノグラフモデルに最も多く使用されているCal.ETA7750を例に取って紹介していきます。

 

自動巻き不良の原因

自動巻き関連の不具合は以下の通りです。
1. リバーシング(切替車)のほぞが摩耗、もしくは劣化による動作不良
2. リバーシングストップバネの形状不良によるもの
3. 角穴駆動車など、自動巻き輪列関連の車の不良 

 

1.リバーシング不良

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※写真はCal.ETA2892のリバーシング
リバーシングのホゾ(中心軸)摩耗、もしくはリバーシング自体の動作不良によって、削れによる金属粉やさびが発生します。また、手巻きをした際にローターが一緒に回転してしまう症状(連れ回り)が起こります。

 

2.リバーシングストップレバー不良

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手巻きや自動巻きによって巻上が行われた際に、ゼンマイがほどけていかないように、自動巻きローターを止めている部品がリバーシングストップレバーです。長期間の使用によってレバーの先端が削れてしまうと、ローターの動作を抑制することができず、回転してしまいます。

 

3.自動巻き輪列不良

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角穴車など、自動巻き上げ関連の輪列が摩耗してしまうと、歯車同士の噛み合いが悪くなり、手巻きの重さが異常に重くなります。また、金属粉やさびの発生が起こります。

 

定期メンテナンスは定期的に!

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歯車の摩耗により、金属粉が発生すると、固着した金属粉がさびになったり、金属粉がいろいろな箇所に入り込むことで、他の部品の摩耗を進めてしまう恐れがあります。そのため、当店では3年~5年に一度の定期メンテナンスをお勧めしております。ぜひ無料の見積りをご利用ください!

 
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時計修理技術者コラムVol.35 クォーツ時計の精度

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時計の精度

時計の精度は、クォーツ>機械式というように、クォーツの方が精度が高いというのが一般的ですが、クォーツの精度はどのようにして出しているのでしょうか?今回はクォーツ時計の精度について紹介していきます。

振動数

時計の精度は振動数によって決定されます。
振動数とは時間単位で往復できる回数を表していて、単位はヘルツ(Hz)であらわされます。
一般的な機械式時計では 5~10振動を採用しています。
対してクォーツ時計はクォーツ(水晶)が、一定の電圧を加えると毎秒32,768振動するため、その振動を増幅・調整して一秒周期の規則的な電流に変換して歯車を回す仕組みになっています。 この振動数がクォーツ時計の精度を構成しています。精度が高いと思われがちなクォーツですが、0.5秒/日程度(月間で15~20秒程度)の誤差は生じます。機械式時計(3~10秒/日、月間で1分~5分程度)に比べると高い精度といえます。
※正確な基準を決めている原子時計は約90億Hz(9,192,631,770Hz)で、10万年に1秒の誤差

 

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クォーツの電子回路です。銀色の筒の中に水晶振動子が入っています。

 

電子回路

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 前出のクォーツ時計の精度は新品の段階のもので、電子回路は電化製品にあたるため、経年劣化が生じます。使用しているうちに誤差も大きくなるため、10年~15年を目安に電子回路の交換をしていただくことをお勧めしています。

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また磁気帯や、電池の液漏れによって電子回路が劣化したり、破損したりする恐れがありますので、電池交換の際に電子回路の点検をしていただくことをお勧めしております。当店では電池交換の際に、内部点検を無料で行っておりますので是非ご利用ください。

 
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『ゼロからわかるオメガ スピードマスター』に当店が取材協力させていただきました!

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2017年9月16日(土)に(株)交通タイムス社から発売される『ゼロからわかるオメガ スピードマスター』にWATCH COMPANYが取材協力させていただきました!

雑誌丸ごとスピードマスターの歴史や、各モデルのムーブメントの解説がされている非常に内容の濃い一冊となっています。既にスピードマスターを所有されている方、これから購入される方にも、まさに完全保存版の一冊です。


当店は時計修理店の観点から、スピードマスターの取り扱いの注意点等、【メンテナンスの最前線】という記事で取材協力させていただきました。紙面では83ページに掲載されていますのでお手に取られた際は是非ご覧ください!

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時計修理技術者コラムVol.34 ムーブメントの固定方法と固定部品の不具合~ロレックス編~

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ムーブメントの収納タイプ

腕時計のほとんどのモデルは時計本体(ケース)にムーブメントが収納されています。時計ケースの形状や構造によって、裏蓋を開けてムーブメントを取り出すタイプ、ベゼルを外して前面からムーブメントを取り出すタイプなど様々なモデルが存在します。今回はロレックスのムーブメントを例に取り、ムーブメントの固定方法とよくあるトラブルをご紹介します。

ロレックスのムーブメント固定方法

ロレックスのムーブメントは、裏蓋を開けて、裏側からムーブメントを入れるタイプになります。 ムーブメントをケース内でしっかりと固定するために使用されている部品は下記の通りです。

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ロレックス/GMTマスターⅡ/16710/キャリバー3185
機止めネジで時計ケースとムーブメントを固定するタイプです。ネジの頭部分にある円形の板によってムーブメントを固定します。

 

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ロレックス/デイトナ/116520/キャリバー4130
機止め板とネジが単独の部品になっていて、機止め板をネジで止めることでムーブメントを固定しています。比較的大きいムーブメントに採用されています。(デイトナ、デイデイト、その他新型ムーブメントなど)

 

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ロレックス/ミルガウス/116400/キャリバー3131
ミルガウスや、新型のエアキング(2016年発表)は、機止めネジなどではなく、ムーブメントを中蓋で固定する構造になっています。

機止めネジに関連したトラブル

機止めネジ関連の不具合は、「手巻きや時刻合わせなど、リューズ操作をした際に文字盤が動く(がたつく)」などの症状が起こります。ネジの緩みが原因であれば締め直すことで改善することができますが、機止め板やネジ自体に破損がある場合は交換が必要になります。

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機止めネジが折れています。外部からの衝撃や部品の経年劣化により折れてしまいます。ネジが内部に折れ込んでいる場合は、除去する作業が追加で必要になります。

 

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機止めネジの頭部分が欠けています。こちらも外部からの衝撃による場合が多いです。

 

異常を感じたら……。

リューズ操作時に文字盤ががたついたり、異音がするようになったら、機止め部品に異常がある可能性があります。ネジが折れてしまっている場合、折れた部品の破片が内部に入ることで、時計が止まったり、別の部品にダメージを与えてしまう可能性があります。
リューズの操作に違和感を感じたら大きなトラブルになる前に、無料の時計診断を受けていただくことをお勧めいたします!

  

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時計修理技術者コラムVol.33 新品仕上げ~ロレックス ラグヘアライン仕上げ編~

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ロレックスのヘアライン

ヘアライン仕上げについては以前も時計修理技術者コラムVol.22 新品仕上げについて~ヘアライン仕上げ編~にて紹介しましたが、今回は旧型のデイトジャスト(16200系統)やロレックスのスポーツモデルの一部に採用されているラグのヘアライン仕上げについて紹介いたします。

ラグのヘアラインについて

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ロレックス デイデイト 18238
仕上げを行う前のラグです。使用によるヘアラインのかすれや、打痕があります。以前の仕上げで本来のヘアライン仕上げよりも平行につけられている状態です。

 

 

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ロレックス デイデイト 18238
丁寧な仕上げによって、傷やへこみが消え、本来のメリハリあるヘアラインに戻りました。ラグの先まで本来の角度でヘアラインが入っています

 

傷が目立ち始めたら……。

 

何度も研磨を繰り返すうちにケースの形状が崩れ、修復できなくなってしまうことがあります。WATCH COMPANYでは、外装研磨の工程を通常より多くとる工夫により、本来の形を保ったまま研磨を行うことができます。
定期メンテナンスの際は、ぜひ新品仕上げもセットでご依頼ください!

 
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