時計修理技術者コラムVol.43 ロレックスのカレンダーの不具合~デイデイト/Cal.3155編~
ロレックスの最上級モデル
ロレックスの最上級モデルといえばプラチナとゴールド素材のみでモデル展開しているデイデイトです。今回はロレックス/デイデイトによく起こる不具合を紹介していきます。
ロレックス/デイデイト/118206/搭載ムーブメントCal3155:ロレックスの最上級モデルで、プラチナとゴールド素材のみ展開していて、ステンレスモデルは存在していない。ロレックスの象徴でもある日付表記の他に、12時位置には曜日表記が備わっている。曜日の表記は26か国語の言語から選択が可能。
2008年には、ケースサイズが一回り大きくなったデイデイトⅡも発表された。
Cal.3155に起こる不具合
Cal.3155は日付と曜日両方に早送り機能がついています。よく起こる不具合は、早送り(リューズ引き出し1段目)は機能するが、針回し(もしくは自然運針)では日付が変わらない症状です。
カレンダー送り不良の原因は、カレンダー中間車と呼ばれる歯車のかしめが緩んだことによるものです。
カレンダー中間車は筒車(時針がついている歯車)と、カレンダー送り車(カレンダーを送る車)の間にある歯車です。
かしめが緩んだ(写真の金色部分と銀色部分が分離した)ことによって、カレンダー中間車が空回りしてしまい、筒車からカレンダー送り車に動力が伝わらなくなります。
その結果、針回しによる日付変更が起こらなくなります。
Cal.3155は、日付と曜日を同時に切り替えるため、カレンダー車のバネが強めに作られています。カレンダー中間車がそのバネの負荷に耐えられなくなった際に、かしめが外れてしまいます。
かしめが緩んだカレンダー中間車は交換しなければならず、メンテナンス費用も高額になりがちです。
カレンダー送りに違和感を感じたら早めにメンテナンスを受けていただく事をお勧めいたします。
POWER Watch 2018年7月号(No.100)に当店が紹介されました!
時計修理技術者コラムVol.42 ネジの修正~ロレックス ブレスレットネジ編~
時計のネジに起こるトラブル
時計を構成する上で非常に多くの場所に使われている部品がネジです。時計のケースとムーブメントを固定したり、裏蓋を固定するためにネジを採用しているモデルもあります。近年各メーカーが自社開発に力を入れる中でネジの形状や大きさもかなり多様化してきました。 使用する工具を間違えたり、サイズの合わない工具を使用するとネジの頭が潰れてしまうなど、トラブルの原因となります。 今回は多くのメーカーが外装に使用しているマイナスネジのトラブル・修正に関してロレックスのブレスレットネジを例にご説明いたします。
ネジの頭がねじ穴に収まりきらず、飛び出ている状態です。はみ出しているため、これ以上はねじ込むことができません。
ネジを抜いて頭部分を見ると、バリ(製品の端からはみ出した余分な部分)が発生しています。これはサイズの合わないドライバーを使ったり、接着剤(ネジロック剤)で固着してしまったネジをペンチ(プライヤー)などで強引に外そうとして付いたものです。ネジが完全に閉まりきらないため、使用中に脱落してしまったり、金属のバリでケガをしたり、衣服に傷がついてしまう原因となります。
引っかかっていたバリが無くなったことで、最後までネジを閉められるようになりました。
仕上げにネジの頭を磨いて完了となります。
時計のネジに起こるトラブル
ブレスレットの調整など、お客様ご自身でされる場合も、サイズの合ったドライバー(ネジ幅=ドライバー幅)をご使用いただくことをお勧めしております。ネジロック剤でしっかりと固定されている場合は、洗浄、熱処理などの作業が必要になることもございますので、ネジを壊してしまう前に、専門店にご相談ください!
時計修理技術者コラムVol.41 革ベルトの交換
革ベルト交換のススメ
今回は当店でご用意させていただいている革ベルトのご案内をさせていただきます。ご使用になられている方ならお気づきかと思いますが、時計の革ベルトの痛みは、非常に早いです。少し汗ばんだだけでも時計を腕から外すと、しっとりと湿っていたり、ひと夏越え、過ごしやすい季節になるころには夏の汗水を十分に吸収した革ベルトは、尾錠(バックル)の穴の部分からひび割れを起こす場合もあります。
定期メンテナンス(オーバーホール)でムーブメントはしっかり洗浄され、外装の傷は新品仕上げで綺麗にしたら、革ベルトも交換されてはいかがでしょうか?
私ども時計修理専門店WATCH COMPANYでは、お使いの時計にあう革ベルトをご提案させていただきます。
※尾錠はブライトリングのオリジナルのものも使用できます。
ブライトリング ナビタイマー A23322
革ベルト CASSIS TYPE BRE UBBRE002 黒カーフ
※ブライトリング純正のベルトではありません。
革ベルトは消耗品のため、ブランドの純正革ベルトではなくても、時計にあった革ベルトであれば社外品、というご要望をよく伺います。当店ではモレラート社の革ベルトを中心に取り扱いがあり、ブランドによっては、モデル専用ベルトの幅や厚みを似せて作成された既製品のベルトをメーカー正規品よりも安価でご用意することができます。
※ブランド純正品のベルトは取り寄せできないものもございます。
※特殊形状のベルトは、オーダーで作成することもできます。詳しくはお問い合わせください。
ブライトリング ナビタイマー A23322
ナイロンストラップ CASSIS TYPE NATO RING B1008S02 グリーン
※ブライトリング純正のベルトではありません。
選ぶベルトを変えれば少し違う雰囲気になります。
革ベルトはそれぞれお取り寄せとなります。修理ご依頼の際にご相談ください。
POWER Watch 2018年3月号(No.98)に当店が紹介されます!
1月30日に発売された、POWER Watch2018年3月号(No.98)の【全国時計修理優良店ガイド】の特集に当店が紹介されました!
特集の【腕時計トラブルA to Z】では当店が取材協力、写真提供をさせていただきました!誌面にも掲載されている当店自慢の新品仕上げ(傷取り研磨)の実例は当店のホームページにも多数掲載していますので是非ご覧ください!
時計修理技術者コラムVol.40 クロノグラフの動作~Cal.7750、Cal.861編~
クロノグラフモデルの構成
クロノグラフ機能を搭載したモデルは、基礎となる部分と、クロノグラフ部分の2種類の機構から構成されています。今回は、スイス時計のクロノグラフモデルに多く使用されているCal.7750と、オメガ/スピードマスター手巻きモデルなどに使用されているCal.861を例に取り紹介いたします。
(写真前)Cal.7750全体/(写真後)オスシレーティングピニオン(クロノ上下接続カナ)です。
上ホゾ(カナが小さい方)がクラッチレバーのホゾ穴に入り、下ホゾ(カナの大きい方)は4番車に隣接する穴石に入ります。
下ホゾ側の大きなカナは4番車へ噛み、上ホゾの小さなカナはクロノセンター車へ噛み合うことでセンター車を動作させます。
クラッチレバーはクロノグラフのON/OFFによってセンター車へオスシレーティングピニオンを接続させたり離したりします。
Cal.861はCal.7750とは異なり、4番車から受けより上に伸びているホゾにつく出車になります。
この出車は4番車と同じホゾで稼働しており、隣接するクラッチホイールと常に噛み合っています。Cal.861ではクラッチホイールがクロノグラフのON/OFFによってセンター車へ噛み合ったり、離れたりします。
オシスレーティングピニオンの場合、上下のホゾが摩耗し、動作が悪くなると、ベースムーブメントの動作が正常でも、クロノグラフを組み込む(作動させる)と動作不良を起こす、という症状が起こります。動作に不具合を感じたら無料の見積もりサービスをご利用ください!