WATCH COMPANY公式ブログ~時計修理技術者コラム~

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時計修理技術者コラムVol.10 ガラスの防水対策~ロレックスオイスターケース編~

 

 

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時計の防水性能

「自分が持っている時計の防水性能はきちんと機能しているのか?」お時計をお預かりしたお客様からよくご質問をいただく内容です。
メーカーが定めている防水性能はきちんと整備されているお時計が前提になります。パッキンやリューズが劣化している状態だと、本来の防水性能が発揮できず水入りしてしまう場合があります。
時計ケースで水の浸入する可能性がある部分は、一般的に下記の箇所になります。各部位の防水構造がきちんと整備されている状態で初めて防水時計としての耐久性を得ることができます。
1、ガラス部(ガラスとベゼル、またはミドルケースの接合部)
2、裏蓋部(裏蓋とミドルケースの接合部)
3、リューズ部(リューズとミドルケースの接合部)※技術者コラムVol.1にて紹介
4、その他特殊構造部(プッシュボタン、ヘリウムガスエスケープバルブなど)

今回は、1のガラス部の構造をロレックス/オイスターケースを例にご紹介いたします。

オイスターケースのガラス構造

ロレックスのガラス部の構造は、合成樹脂製のパッキン(クリスタルワッシャー)をガラスの溝にはめ込み、ミドルケースの見返しと呼ばれる立ち上がりにかぶせ、最後にベゼルを圧入して固定しています。

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ロレックスのガラスです。矢印の部位に溝があります。

 

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クリスタルワッシャーを溝の部分にはめ込みます。

 

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時計ケースにサファイアクリスタルガラス、クリスタルワッシャーをセットし、上からベゼルを圧入することでガラスを固定し、防水性を確保することができます。

 

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ベゼルを圧入した状態です。ガラスと時計ケースがしっかりと固定されました。

 

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ガラスが欠けたり、クリスタルワッシャーが劣化していると、防水不良の原因となり、ダイヤルや針、ムーブメントを痛めてしまう原因となります。※写真は(前)16220/(後)6694、風防モデル

 

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新品のクリスタルワッシャーです。

 

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長期間の使用により劣化したクリスタルワッシャーです。弾力性が無くなり、ひびが発生するケースもあります。防水性を保持できないため、交換が必要です。

 

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変形したクリスタルワッシャーです。長期間の使用や、誤った取扱いによって一部がつぶれています。防水性を保持できないため、交換が必要です。

 

時計の防水性能を理解して正しいご使用方法を。

時計のムーブメントを埃・湿気・水分から守るために時計の使用目的別に耐水性の規格と防水仕様の区分が分けられています。

【日常生活用防水】(3気圧防水程度)
・日常生活での汗、洗面、雨などに耐えられるもの。

【日常生活用強化防水1】(5気圧防水程度)
・水に触れる機会の多い水仕事、ヨットなどのスポーツに使用可。

【日常生活用強化防水2】(10~20気圧防水程度)
・水に頻繁に触れる仕事や素潜りなどに使用可

【潜水用防水】(100m、200m、300m防水)
・水深100~300mまでの耐圧性と、長時間の水中使用に耐えることのできる性能。スキンダイビング、空気ボンベを使用するスキューバダイビングなど。

【飽和潜水用防水】(200m以上の防水)
・表示水深耐圧性と、ヘリウムガス対策の機密構造を持つ時計。ヘリウムガスを使用する潜水方式にも対応可。

防水性能を保持するためにも定期メンテナンスを!

パッキンや、今回紹介したクリスタルワッシャーの劣化や変形によって本来の防水性が無い状態で水入りしてしまうことの無いように、定期的なメンテナンスをお勧めいたします。また、実際に海やプールで使用する際は、水に入る前に、リューズやプッシャー(得にねじ込み式のモデル)の締め忘れが無いようにしっかりとチェックした上でご使用ください。ご使用後はしっかりと水気を取るなどのお手入れをしていただくこともお忘れなく。万が一水入りしてしまった場合は速やかに専門店に修理出ししていただくことをお勧めいたします。

 

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