時計修理技術者コラムVol.6 外装の変形や歪み~ロレックスバックル(クラスプ)編~
外装の変形や歪み
バックルは日ごろ腕時計を着脱する際に必ず動かす部品です。毎日使用する中で、変形や摩耗によって金属同士の食い合いが変わり、外れやすくなってしまうことがあります。
今回はロレックスのバックルを例にとって、バックルの緩みに関してご紹介いたします。
ロレックスのバックルの歪み
ロレックスのバックルは2枚の蝶番になっているプレートをツメで止める形状になっています。※画像参照
着脱するたびにツメに負担がかかるため、徐々にツメが開いてしまいます。また、ツメを受ける部分も常に負担がかかるため、歪みやすくなります。
ツメが開き、金属が歪んだ状態だと、きちんとバックルが閉まらずに、開いてしまいます。
ツメが開いています。
金属の開きを修正いたしました。
バックル付け根の金属が歪んでいます。
金属の歪みを修正いたしました。
先ほどはしっかりと締まらなかったバックルも、金属の修正により、ぴったりと収まるようになりました。
大きな事故や故障が起こる前に……。
歪みや摩耗が進むと、時計の落下や、大きな破損につながります。バックル一式の交換をしないといけなくなる前に、定期的なメンテナンスを受けていただき、お時計の内部だけではなく、外装のダメージもケアしましょう!
時計修理技術者コラムVol.4 ベゼルのトラブル~ブライトリング・回転インナーベゼル編~
回転インナーベゼルの不具合
ブライトリングのナビタイマーといえば、航空用回転計算尺を搭載しているベゼルで有名ですが、そんな回転インナーベゼル搭載のオーナー様から「ベゼルの回転が重くなってしまった。」「ベゼルが完全に固まってしまった(動かなくなった)」などの問い合わせを頻繁に頂きます。
今回はブライトリングのナビタイマーを例にとって、回転インナーベゼルの不具合と、修理時の対応をご紹介いたします。
時計ケースの構造
ナビタイマーのケースの構造は【スリーピース構造】と呼ばれているもので、回転計算尺が内蔵されているベゼル、ムーブメントが収まるミドルケース、裏蓋の3つからなります。
このケース構造の大きな特徴としては、ベゼル部分が3点のピンで固定されていることです。
ベゼルの動作不良は、ベゼルとミドルケースのわずかな隙間から汚れが浸入し固着してしまう、ベゼル内部に取り付けられているゴムパッキンのシリコングリス切れ、パッキンの劣化などが原因になります。
上記の作業を行い、ケースを組みなおすと、ほとんどの場合は修理前よりもスムーズにベゼルが回転するようになります。
ベゼルの回転が悪くなったら……
時計の機能に直接影響する箇所ではなく、使用することがほとんどない機能のため、気付きにくい不具合ではありますが、ベゼルの油が乾いているということは、ムーブメント内部の油も減少している可能性が高いため、オーバーホール時期の目安になるのではないでしょうか?
お持ちのお時計のベゼルの回転が悪くなってしまった場合は、是非ご相談ください。無料でお見積もりさせていただきます。オーバーホール含む修理も、ベゼルの回転不良に対する部分的な修理も承ります。
時計修理技術者コラムVol.3 クォーツ時計の仕組み~電子回路編~
クォーツ時計の故障原因
クォーツ時計(クォーツ、水晶時計)の故障で8割以上を占める原因が、電子回路の不具合です。電子回路に不具合があると、時計の精度不良(遅れや進み)、電池寿命の短縮などが起こります。
今回はクォーツ時計の電子回路について紹介します。
クォーツ時計の仕組み
クォーツは「石英」と呼ばれる鉱石の一種です。クォーツ時計はクォーツの結晶を振動させることで一定の進度を保っています。その振動を調整している部品が電子回路です。
電子回路
電子回路の故障は、経年劣化により引き起こされる場合が多いです。
一般的に電子回路の寿命は10年程度といわれています。それにより定期的に交換を必要とする部品となります。
電池の液漏れによる故障
クォーツ時計は電池を動力源としているため、電池の液漏れによる不具合も非常に多いです。少量の液漏れによる電子回路の破損であれば、電子回路の交換(+オーバーホール)にて修理が可能です。
しかし、電池切れ後、長期間古い電池を入れたままにしておくと、電子回路に悪影響を与えるだけではなく、ムーブメント全体に劣化や腐食が広がり、ムーブメント一式の交換が必要になる場合があります。
クォーツ時計を長く使っていただくために
クォーツ時計をより永く使っていただくために、電池切れで止まってしまった時計は早めに電池交換をすることをお勧めいたします。時計修理専門店WATCH COMPANYでは、電池交換で依頼いただいた場合も、専用の測定機を用いて、精度や消費電流を調べ、回路の状態を点検させていただきます。ムーブメント内部の油の状態や、汚れ具合も点検し、必要に応じてオーバーホールのご提案をさせていただいております。時計修理技術者コラムVol.2 外装の汚れと腐食~ステンレススチール編~
セルフメンテナンスのススメ
精密機械である機械式時計は、定期的なメンテナンスは専門店やメーカーに依頼することは一般常識となっていますが、日常的にご自身でできるメンテナンスも非常に重要です。
日常的なケアを怠ると、外装の破損など、思わぬメンテナンス費用が掛かることもあります。
今回はご自身でもできる手軽なメンテナンスをご紹介いたします。
ステンレススチールとは
ステンレススチールとは、STAIN(汚れ・さび)LESS(無し)という、その名の通り、汚れやさびに強い金属です。
鉄の含有量を50%以上、クロムを10.5%以上含む合金で、クロムが表面に酸化皮膜(不動態皮膜)を形成するため、非常に腐食しにくい素材です。メッキや塗装をしなくても良いため、ほとんどのブランドが高級時計の外装に使用しています。
しかし、毎日の使用により、汗・皮脂・ほこりなどの汚れがたまり、腐食が起こってしまうことがあります。
ケース①
使用により汚れてしまったバックル
洗浄して、きれいに汚れを除去できました。
上記のように早い段階で汚れを落とせば、腐食も防ぐことができます。
しかし、汚れが付着したまま、長期間の使用を続けると…。
ケース②
先ほどは洗浄できれいに除去できましたが…。
汚れた箇所が腐食していました!
※腐食部分の拡大
平面上のの凸凹が少なくなればなるほど、汚れが付きづらくなります。
再度、酸化皮膜が作られるようになれば、進行を食い止めることができます。写真のような軽度の腐食であれば、除去することができます。
金属の腐食を進行させないために
ステンレスは汗や皮脂の蓄積汚れが天敵です。外装のトラブルを避けるためにも、日々のケアをお勧めさせていただいております。一定期間のタイミングで拭き掃除や汚れの除去を行っていただくことで、外装不具合を減らすことができます。
細かい繊維で作られたクロスです。その他、シカの革を植物油でなめしたセーム革なども時計の外装をきれいに拭くのに適しています。
時計ケースとブレスレットの間や、ブレスレットの駒間を磨くことができるブラシです。毛先が柔らかいため、時計を傷つけること無く汚れを落とすことができます。
万が一トラブルに見舞われてしまった際は、ぜひ時計修理専門店WATCH COMPANYへお問い合わせくださいませ。お見積もりは無料です。発送をご希望のお客様には無料梱包キットを手配させていただきます。
POWER Watch 2016年7月号(No.88)に当店が紹介されました!
5月30日発売のPOWER Watch2016年7月号(No.88)の【全国時計修理優良店ガイド】の特集に当店が紹介されました!
今回は、バーゼル2016にて発表された新作モデルを500本紹介しています!これから新作モデルを購入される方には必読の一冊になっています。
新しいモデルを購入後は、今まで頑張ってきた時計を是非メンテナンスに出してあげましょう!定期メンテナンスのご相談は是非時計修理専門店WATCH COMPANYへご相談ください!
提供:
時計修理技術者コラムVol.1 時計の防水性~ねじ込み式リューズとチューブ~
定期メンテナンスのススメ
機械式時計は精密機器です。日常の使用方法や、メンテナンスを受けて頂く頻度によって、時計の寿命は変わってきます。大切な時計を末永く使って頂けるように、使い方のコツをご紹介させていただきます。
時計の防水性~ねじ込み式リューズとチューブ~
防水性が落ちると、時計内部に湿気や汗が侵入してしまいます。
水入りによって時計内部の部品が損傷を受けてしまい、損傷が大きければ大きいほど、メンテナンスの費用も高額になってしまいます。
防水性を保持するために重要な役割をしている部品の一つにチューブがあります。
チューブの状態が悪くなると、ねじ込みが次第に浅くなり、最終的にはリューズが全くねじ込めない状態(リューズが常に解放している状態)になってしまいます。リューズがねじ込めない状態になると、防水性が無く、浸水する状態になります。
汚れや摩耗が無く、防水性も問題はありません。
汚れが蓄積されることで、しっかりとねじ込みができない状態になると防水性が落ちてしまいます。しかし、汚れやゴミが付着しているだけであれば、定期的に除去することで防水性も確保することができます。
ネジ山がつぶれた状態で使用を続けると、リューズも損傷(摩耗)してしまいます。多少ねじ込みができる状態でも、すぐにねじ込めない状態になることが予想されます。リューズを傷つけないためにも早めの部品交換をお勧めします。
ねじ込みが浅くなった?引っかかる程度しかねじ込めない?
リューズ・チューブ共に金属製のため、使用と共に経年劣化(摩耗や変形)をしてしまいます。
リューズやチューブを少しでも長くご使用いただくために、リューズをねじ込む際は、ねじ込める箇所を丁寧に探し、ゆっくりとねじ込んでいただくことをお勧めしております。
外装部品(特にリューズ)は、価格が高騰傾向にあります。部品の交換だけでオーバーホール料金以上(!?)するものもございます。
高額なメンテナンス料金に悩む前に、是非修理のご相談をお勧めいたします。
お見積もりは無料です。発送をご希望のお客様には無料梱包キットを手配させていただきます。