WATCH COMPANY公式ブログ~時計修理技術者コラム~

時計修理専門店WATCH COMPANYの公式ブログです。

時計修理技術者コラムVol.17 自動巻きの不具合について~ロレックスCal.3135編~

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ロレックスに起こる不具合

当店で年間受注件数が最多となるブランドはロレックスですが、ご依頼いただく内容としては、
・精度不良や止まり。
・リューズを巻きあげる際に違和感がある。(巻くときに引っ掛かりがある。巻き上げが重い。)
・一日時計を着用し、夜外して次の日の朝には止まっている。(巻上の持続時間が短い。)
などの症状が挙げられます。
これらの不具合は、実は自動巻き機構の歯車が原因となっていることが多いのです。
今回はロレックスのCal.3135を例に自動巻きの不具合をご紹介いたします。
※Cal.3135:ロレックスの全時計の中で広く採用されているムーブメント。現行のデイトジャスト(メンズ)や、サブマリーナデイト、ヨットマスターなど、デイト表記有りの3針の時計に搭載されています。1988年に開発されてから30年近く大きな変更もなく使用されています。

リバーシングホイールの動作不良

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ロレックスCal.3135リバーシングホイール/自動巻きの主要歯車で、ローターの回転をゼンマイの巻き上げの力に変える役割を行っています。ローターの回転や手巻き時に回転するため、非常に摩耗しやすい部品ですが、ロレックスのリバーシングホイールはアルミニウム素材にレッドアルマイト処理を施しているため、耐久性が高いです。また、それでいて軽量のため、高い巻き上げ効率を実現しています。

 

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正常なリバーシングホイールです。

 

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使用により摩耗したリバーシングホイールです。
長年の使用による経年劣化や、必要以上に手巻きをすることでラチェット部分に負荷がかかり、削れています。この状態になると、手でゼンマイを巻いた際に手巻きが重く感じたり、ローターが一緒に回転してしまうようになります。
オーバーホールだけでは巻き上げ不良は改善されないため、部品の交換が必要です。

 

手巻きが重くなってきたら……

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手巻きが重くなってきたら油切れだけではなく、リバーシングホイールが摩耗している可能性があります。早めにオーバーホールしていただければ、部品を交換することなく、部品の修正で対応できる場合もあります。手巻きが重くなった状態で長期間使用を続けると、関連する部品も破損する原因となります。

リューズに負荷がかかり、破損してしまい高額な修理代金になるケースもあります。
違和感を感じたら早めのメンテナンスを受けられれることをお勧めいたします。

 
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時計修理技術者コラムVol.16 クロノグラフの動作不良について~Cal.ETA7750編~

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クロノグラフの動作不良

クロノグラフ機能が付いたモデルの修理でよく「スタートやストップの操作ができなくなった」とご相談いただきます。
クロノグラフの故障の原因は様々考えられますが、今回はよく発生する原因をETA7750を例に取りご紹介いたします。

オペレーティングレバーの変形

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ETA7750オペレーティングレバー新品(左)、変形したETA7750オペレーティングレバー(右)

オペレーティングレバーが原因でクロノグラフ不良が起こる場合、主な原因としてプッシャー(プッシュボタン)のストロークが当たる部分の変形があげられます。※写真右矢印箇所
正常なものはストロークが当たる部分が垂直になっていますが、不良部品は内側へ曲がっています。油切れなどで、動きが固い状態でプッシャーを押し込むことで変形してしまいます。部品が変形した状態でプッシャーを押し込んでも、ストロークがレバーを稼働させないため、クロノグラフの動作不良が起こります。
変形が僅かなものは修正して部品を再生することができますが、写真のように大きく変形してしまった場合は、修正後も再度変形しやすいため、部品の交換が必要になります。

クロノセンター車のストップレバー不良によるもの

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ETA7750ストップレバー/クロノグラフのスタートとストップの操作の際に稼働する部品です。

 

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通常、クロノグラフセンター車のストップレバーは写真のように歯車の側面部分に接してスタートとストップを規制しています。

 

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写真のようにセンター車の上にストップレバーが乗り上げてしまっている状態になると、スタートとストップの規制ができず、クロノグラフが動作しなくなります。
一度この状態になってしまうと、内部修正を行わないと改善することができません。また、この状態でレバー操作を繰り返してしまうと、先に紹介したオペレーティングレバーの変形にもつながってしまいます。

 

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ストップレバーは、矢印部分のバネ部分を調整することで修正を行うことができます。

 

クロノグラフモデルの注意点

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クロノグラフモデルの場合、動作に関連する部品が多いため、1か所不良がある状態で使用を続けると、他の部品も連動して不良を起こすケースが多いです。
プッシャーの操作が固くなったり、反応が悪くなった場合は、早めに時計内部の状態を確認していただくことでトラブルを回避することができます。
是非、WATCH COMPANYの無料見積もりにお問い合わせください!

 

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横浜に修理受付窓口を開設いたしました!

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TOCみなとみらいにて修理受付が可能になりました。

みなとみらい21地区の主要駅のひとつ桜木町駅から徒歩1分、TOCみなとみらいで現行品の当社取扱いブランドに限り修理品のお預かりが可能です。見積まで土日を除く3営業日・最短納期2週間も変わらず対応しております。横浜エリアにお住まい・お勤めのお客様には特に便利にご利用いただけます。

 

横浜受付 平日10:00~17:00(土・日・祝日は休業となります)
※修理品お預かり業務のみとなります。見積・納品は本社からのご連絡と配送になります。
※電池交換のご依頼は3,240円~にて承りが可能です。本社にて作業を行うため、必ずお預かりとなります。(お預かり期間は約1週間です)

 

〒231-0062

神奈川県横浜市中区桜木町1-1-7
TOCみなとみらい10階 サーブコープ
TEL:045-228-5509

桜木町駅北改札から1分。コレット・マーレ横のエスカレーターから2階スカイデッキへ。外壁沿いを進み、オフィスエントランスからエレベーターで10階へおあがりください。

 

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右側奥・サーブコープカウンターにて当社専属スタッフが対応いたします。時計修理の受付をお申し付けください。「修理ご依頼書」をご記入いただき、お時計を預けて頂きましたら、土日を除く3営業日を目安に本社よりお見積もりのご連絡をさせていただきます。

 

 

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時計修理技術者コラムVol.15 一番受けの摩耗が引き起こす不具合~Cal.ETA2892編~

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部品の摩耗による不具合

日々修理を行わせていただいていると、「油切れ」、「摩耗」などの言葉を非常によく使用しています。摩耗といっても、時計の部品は非常に小さいため、専用のルーペを使用しないと判別できないレベルのものがほとんどになります。
今回は部品の摩耗と、摩耗に伴う不具合をフランクミュラーやブルガリなど多くのメーカーで採用しているETA2892の一番受けを例にご紹介していきます。

一番受けの仕組み

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一番受けはゼンマイが収められている香箱を上から押さえているプレート状の部品で香箱受けとも呼ばれます。ゼンマイを巻き上げる際に稼働する複数の歯車が取り付けられる土台にもなっています。※ムーブメントの種類によって構造は異なります。

ETA2892では、ゼンマイを巻き上げる際に、遊動車と呼ばれる丸穴中間車が左右にスライドし、自動巻きと、手巻きを切り替えを行っています。

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丸穴中間車(赤矢印部分)がある程度稼働できる作りになっています。このスペースが無いと、多くの歯車が連動してしまい、自動巻き上げができない、部品の負担が非常に大きくなるなどの不具合が生じます。

 

一番受けの不良(摩耗)

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新品の一番受け(前)、摩耗した一番受け(後)

丸穴中間車が入る軸は、油が切れると歯車が動くことで削れることがあります。後者の軸は大きく削れているため、歯車の可動範囲がより大きくなり、他の歯車にも悪影響を与えてしまいます。
写真の状態まで削れてしまうと、修正ができないため一番受けごと交換が必要になります。一番受けは比較的高額な部品となるため、交換すると必然的にトータルの修理料金も高くなってしまいます。

手巻きに違和感を感じたら……

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一番受けが摩耗した状態で感じる不具合(違和感)は、

 

・手巻きをした際にごりごりとした感触がする
・手巻きが非常に重い

 

などがあります。また、時計の機能としても自動巻き上げ不良や、パワーリザーブ不足などの症状も生じます。
実際の使用状況にもよりますが、

 

・長期間オーバーホールしていない
・手巻きを頻繁に行っている

 

などの場合は注意が必要です。思い当たる点がありましたら是非一度無料見積もりを受けていただくことをお勧めいたします。

 

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時計修理技術者コラムVol.14 ダイバーズウォッチの特殊構造~ロレックス シードゥエラー編~

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ダイバーズウォッチ(防水時計)の特殊構造について

機械式時計の防水技術が高まるにつれて、ダイバーズウォッチの時計ケースにも特殊な構造が搭載されるようになりました。その一つがヘリウムガスエスケープメントバルブ(ヘリウム排出バルブ)です。今回はロレックスのシードゥエラー(Ref.16600/116600)を例に役割と構造をご紹介させていただきます。

ヘリウムガスエスケープバルブの役割

飽和潜水は非常に高い水圧下での活動となります。その際に高分圧の窒素を摂取することで窒素中毒を引き起こす危険性があるため、酸素とヘリウムの混合ガスを使用することが多い。
ヘリウムは密度(分子)が小さいため、高水圧下での呼吸抵抗の低減に役立ちますが、その分子の小ささゆえに、高性能のダイバーズウォッチでも内部に侵入してしまいます。
圧力が高いヘリウムガスが充満したままで低水圧(気圧)下に戻ると、ケース内外の気圧差で時計が破損する(ガラスが外れる)恐れがあります。
そういった破損を避けるために、内部に混入したヘリウムガスを逃がす役割をしているのがヘリウムエスケープバルブです。

ヘリウムガスエスケープバルブの構造

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ロレックス/シードゥエラー/16600 ヘリウムガスエスケープバルブ(前)、分解(後)

ヘリウムガスエスケープバルブは普段使用している際(大気圏使用時)は、ケースとバルブ間のパッキンが密着し、生活水を遮断しています。また、深海では水圧を利用し、内蔵されているスプリングがバルブを押し、防水性を保つ仕組みになっています。このバルブの構造は1967年にロレックスが開発し、特許を取得しています。

ダイバーズウォッチの落とし穴

ヘリウムガスの排出を目的として堅牢なオイスターケースにバルブを取り付け、パッキンで防水をしているため、パッキンが劣化し断裂等を起こした場合はバルブから浸水してしまう恐れがあります。時計修理専門店WATCH COMPANYでは、オーバーホールの際にバルブを完全に分解してバルブ周りに付着した汚れやごみを除去するだけではなく、劣化したパッキンの交換も行っております。

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ダイバーズウォッチの防水性は非常に素晴らしい反面、特殊構造部分のケアを怠ると水入りなどのトラブルに遭う恐れがあるため、定期的なメンテナンスをお勧めいたします。

 

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時計修理技術者コラムVol.13 ロレックスのムーブメントの特徴~デイトナCal.4130編~

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オーバーホールのススメ

ロレックスの時計が自社性ムーブメントを搭載していることはあまりに有名ですが、そのムーブメントのクォリティーの高さ、故障頻度の少なさから、メンテナンスを一度も受けずに何年・何十年も使用されているユーザーさんが多いようです。今回はロレックスのムーブメントを例に交換頻度の多い部品の紹介と、定期メンテナンスの大切さをご紹介いたします。

 

ロレックス/デイトナ(Cal.4130)の特徴

デイトナには2000年から現在に至るまで、Cal.4130というムーブメントが使用されています。

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発表されてから20年弱の間にマイナーチェンジを繰り返し、ムーブメントの耐久性や精度を高めています。ロレックスが完全に自社生産した機械で基本的には丈夫に作られています。またメンテナンス(オーバーホール)も非常にしやすい設計になっています。ただ、非常にクォリティの高いムーブメントのため、異音がする、止まりなどのお客様自身で気づきやすい不具合が起こりづらいという特徴があります。

 

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旧型のクロノグラフランナー(左)と新型のクロノグラフランナー(右)です。外周の歯車の形状が改良されています。

 

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旧型の4番車(左)と新型の4番車(右)です。内側の歯車の形状が改良されています。

 

摩耗しやすい部品

「最近止まりやすくなった、遅れが気になる。」などの理由でお持込いただいた時計を見ると、油の劣化、部品の摩耗がかなり進行していたケースが多いです。下記にご紹介する部品のような状態になってしまうと、部品の修正ができず交換が必要になります。交換部品が多くなると、結果的に修理代金が高額になってしまうことになります。

 

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交換が必要な状態の2番車です。中心部分が摩耗し黒くなっています。

 

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アンクル全体図(前)アンクル拡大図(後)

調速機構のアンクルです。矢印部分の爪石に傷が入っています。動きが悪くなり精度不良の原因になります。

 

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新品のフリクションスプリング(前)摩耗により円状に溝ができたフリクションスプリング(後)

センターセコンドが取り付けられる歯車を規制している部品です。

 

早め早めのメンテナンスを!

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購入して最初のメンテナンスはなかなかタイミングがつかめないというお客様もたくさんいらっしゃいますが、早めのメンテナンスをしていただくとトラブルなくお時計を使用いただけると思います。特に新品の時計は、最低限の油量しか注油されていなかったり、お客様の手元に渡るまでにすでに数年が経過していたりする場合もあるんです!

お時計の深刻な故障が発生する前に、3年から5年に一度定期メンテナンスをお勧めいたします。

 

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時計修理技術者コラムVol.12 ガラス接着剤の劣化~フランクミュラー・カルティエ編~

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時計ガラスの取付方法

時計のガラス(風防)を取り付ける方法として、主に3つ挙げられます。

 

・ガラスパッキンによる固定(ロレックス、ブライトリングなど)

 

・接着剤による固定(フランクミュラーカルティエなど)

 

・圧入式(オメガなど、プラスチック風防が採用されているモデル)

 

今回は接着剤で取り付けをするフランクミュラーカルティエを例にご紹介いたします。

ガラス接着剤の劣化

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フランクミュラー/トノーカーベックス

経年劣化により、ガラスの接着剤が劣化したガラス(前)ガラスの再接着を行ったガラス(後)

 

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カルティエ/パンテール

ガラスの接着剤が変色したガラス(前)ガラスの再接着を行ったガラス(後)

 

ガラスの取付順序

1.経年劣化により変色してしまった接着剤をガラス、ケースから除去するために剥離剤に浸します。
劣化が進行すると、超音波洗浄機にかけると外れる場合もありますが、ガラスの破損がないよう慎重に作業を行うため、剥離剤を使用します。

 

2.取り外したガラスとケースの接着面に残っている接着剤を残らずすべて除去します。接着面にもともとの接着剤が残っている状態だと、新しい接着剤がしっかりと浸透しないため、ガラスを再接着した際の見栄えが悪くなります。

 

3.上記2点の作業が完了したら取り付け作業を行うことができます。
当店では紫外線硬化作用のある接着剤を使用しています。粘度が低く、ガラスとケース間にしっかりと浸透します。また、無色のため接着完了後の見栄えがよく仕上げることができます。接着剤を塗布し、ケースにセットした後、接着剤が不足している箇所に接着剤を追加し、全体に完全に浸透したことを確認し完了となります。

ガラスの接着面が変色してきたと思ったら……

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ガラス接着剤の劣化は、文字盤への湿気や細かいごみの混入だけではなく、防水性の低下による水入りの原因にもなります。

お手持ちのお時計の文字盤に小さいごみや目立つようになった、針やインデックスのくもりが出始めたなど、少しでも目に見える部分で変化がございましたら、是非ご相談ください。無料でお見積りさせていただきます。

 

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