WATCH COMPANY公式ブログ~時計修理技術者コラム~

時計修理専門店WATCH COMPANYの公式ブログです。

時計修理技術者コラムVol.11 裏蓋ねじ(ビス)止め式のよくあるトラブル~フランクミュラー編~

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時計の裏蓋の固定方法

時計の基本構造は、ミドルケースに裏蓋を固定するという方式が一般的です。※一部ワンピース構造など特殊なものもあります。

裏蓋をミドルケースに固定する構造としては、

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※ロレックス/サブマリーナ16610

・スクリューバック式 ロレックス、パネライ、ブライトリングなど
裏蓋とケースにねじが切られているケースです。気密性が高く、防水性能が高いのが特徴です。

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※オメガ/スピードマスター3510-50

スナッチバック式 オメガ、ブルガリなど
裏蓋をプラスチックやテフロン製のパッキンで固定するタイプです。

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フランクミュラー/カサブランカ6850

・ねじ(ビス)止め式 フランクミュラーカルティエなど
裏蓋をネジで固定するタイプです。

の3つに分かれます。

今回はフランクミュラーのケースを例に取り、ねじ(ビス)止め式の時計について紹介いたします。

ねじ(ビス)止め式の特徴

ねじ(ビス)止め式とは、裏蓋を複数のネジで固定するタイプを指します。
特徴としては、ケースの厚さを薄くできる、ケースの形状を複雑(楕円形、多角形)にできるため、デザイン性に優れた時計に採用されています。

しかし、汚れや汗、水分がねじ部分から侵入しやすいという欠点もあります。

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フランクミュラー/カサブランカ6850

多くのねじ止め式裏蓋は、パッキンの外側にねじを取り付ける構造のため、防水性能が保証されている時計であっても、ケースと裏蓋の隙間から汚れや汗が浸入して、ねじ部分にまで達する場合があります。

長年の汚れや汗によって、オーバーホールや電池交換の時期にはねじやケースのねじ穴に腐食やさびが発生し、ねじがボロボロになり使用できなくなる、さびの固着によりねじが折れてしまうなどの弊害が起こります。
その場合、ねじ交換や、折れ込んだねじの除去が必要になり、修理料金も高額になります。

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フランクミュラー/トノーカーベックスグランギシェ6850S6GG

ねじがさびてケース内で折れ込んでいます。裏蓋にもさびが広がっています。

 

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フランクミュラー/裏蓋ねじ

新品のねじ(前)と、汚れが蓄積されたねじ(後)です。

 

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フランクミュラー/裏蓋ねじ
さびが広がり、折れてしまったねじです。

 

ねじ(ビス)止め式時計の注意点

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ねじ部分の狭い隙間に入り込んだ汚れや水分は分解して除去する以外に方法がありません。

そのため、メンテナンスを行っていない状態で長期間使用することで、ステンレススチールのようなさびにくい素材であっても、さびが発生してしまいます。※金無垢素材の場合、変色はしますが、さびが発生することはありません。
時計の動作に特に不具合が無いため、長期間メンテナンスを行っていないと、裏蓋が開かなくなるなどのトラブルにつながる可能性があります。
内部の不具合のためだけではなく、外装の点検のためにも定期メンテナンスをお勧めいたします。

 

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時計修理技術者コラムVol.10 ガラスの防水対策~ロレックスオイスターケース編~

 

 

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時計の防水性能

「自分が持っている時計の防水性能はきちんと機能しているのか?」お時計をお預かりしたお客様からよくご質問をいただく内容です。
メーカーが定めている防水性能はきちんと整備されているお時計が前提になります。パッキンやリューズが劣化している状態だと、本来の防水性能が発揮できず水入りしてしまう場合があります。
時計ケースで水の浸入する可能性がある部分は、一般的に下記の箇所になります。各部位の防水構造がきちんと整備されている状態で初めて防水時計としての耐久性を得ることができます。
1、ガラス部(ガラスとベゼル、またはミドルケースの接合部)
2、裏蓋部(裏蓋とミドルケースの接合部)
3、リューズ部(リューズとミドルケースの接合部)※技術者コラムVol.1にて紹介
4、その他特殊構造部(プッシュボタン、ヘリウムガスエスケープバルブなど)

今回は、1のガラス部の構造をロレックス/オイスターケースを例にご紹介いたします。

オイスターケースのガラス構造

ロレックスのガラス部の構造は、合成樹脂製のパッキン(クリスタルワッシャー)をガラスの溝にはめ込み、ミドルケースの見返しと呼ばれる立ち上がりにかぶせ、最後にベゼルを圧入して固定しています。

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ロレックスのガラスです。矢印の部位に溝があります。

 

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クリスタルワッシャーを溝の部分にはめ込みます。

 

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時計ケースにサファイアクリスタルガラス、クリスタルワッシャーをセットし、上からベゼルを圧入することでガラスを固定し、防水性を確保することができます。

 

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ベゼルを圧入した状態です。ガラスと時計ケースがしっかりと固定されました。

 

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ガラスが欠けたり、クリスタルワッシャーが劣化していると、防水不良の原因となり、ダイヤルや針、ムーブメントを痛めてしまう原因となります。※写真は(前)16220/(後)6694、風防モデル

 

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新品のクリスタルワッシャーです。

 

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長期間の使用により劣化したクリスタルワッシャーです。弾力性が無くなり、ひびが発生するケースもあります。防水性を保持できないため、交換が必要です。

 

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変形したクリスタルワッシャーです。長期間の使用や、誤った取扱いによって一部がつぶれています。防水性を保持できないため、交換が必要です。

 

時計の防水性能を理解して正しいご使用方法を。

時計のムーブメントを埃・湿気・水分から守るために時計の使用目的別に耐水性の規格と防水仕様の区分が分けられています。

【日常生活用防水】(3気圧防水程度)
・日常生活での汗、洗面、雨などに耐えられるもの。

【日常生活用強化防水1】(5気圧防水程度)
・水に触れる機会の多い水仕事、ヨットなどのスポーツに使用可。

【日常生活用強化防水2】(10~20気圧防水程度)
・水に頻繁に触れる仕事や素潜りなどに使用可

【潜水用防水】(100m、200m、300m防水)
・水深100~300mまでの耐圧性と、長時間の水中使用に耐えることのできる性能。スキンダイビング、空気ボンベを使用するスキューバダイビングなど。

【飽和潜水用防水】(200m以上の防水)
・表示水深耐圧性と、ヘリウムガス対策の機密構造を持つ時計。ヘリウムガスを使用する潜水方式にも対応可。

防水性能を保持するためにも定期メンテナンスを!

パッキンや、今回紹介したクリスタルワッシャーの劣化や変形によって本来の防水性が無い状態で水入りしてしまうことの無いように、定期的なメンテナンスをお勧めいたします。また、実際に海やプールで使用する際は、水に入る前に、リューズやプッシャー(得にねじ込み式のモデル)の締め忘れが無いようにしっかりとチェックした上でご使用ください。ご使用後はしっかりと水気を取るなどのお手入れをしていただくこともお忘れなく。万が一水入りしてしまった場合は速やかに専門店に修理出ししていただくことをお勧めいたします。

 

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時計修理技術者コラムVol.9 リューズの操作不良~ロレックスCal.3135編~

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時間合わせとリューズ操作

機械式時計は使っていなければ止まってしまいます。止まってしまった時計を着用するときにまず行うのが時間合わせです。時間合わせの際に操作するのがリューズですが、長期間の使用によりリューズ周りの歯車に不具合が発生してしまうことも……。
今回はリューズ操作と、リューズ周りの歯車に関して紹介させていただきます。

例としてロレックスのメンズのお時計に多く使用されているCal.3135を見ていきます。

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針動作時の歯車の関係

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リューズを回すと、数個の歯車を介して針を動かすことができます。
各歯車が収まっている軸には油が注されていますが、時間の経過や使用頻度により劣化が進んでいきます。油の状態が悪くなると歯車の動きが重くなります。(針を操作する際の感触が重くなります。)その状態で、無理やり針の操作を続けてしまうと、リューズの周辺の歯車を破損させてしまう原因となります。

 

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新品の小鉄車(前)と、歯かけした小鉄車(後)

非常に小さい歯車のため、破損頻度が高い歯車です。
サブマリーナなど、リューズのサイズが大きいモデルの場合、リューズを指でしっかり握ることができるため、針回しが重い状態でも操作ができてしまいます。その結果、歯車が破損してしまうケースが多くなる傾向にあります。

 

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新品のツヅミ車です。

 

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摩耗したツヅミ車です。小鉄車と噛み合う部分が削れています。

針回しが重いと思ったら……。

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歯車が欠けてしまったり、摩耗してしまうと、発生した鉄粉によりオーバーホールが必要になります。破損部品が他の正常な部品を傷つけてしまうこともあり、さらに交換部品が増えてしまう原因になります。

「針回しが以前よりも重くなってきた……!?」などの異常を感じたら早めにメンテナンスを受けられることをお勧めいたします。

 

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POWER Watch 2016年9月号(No.89)に当店が紹介されました!

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7月30日発売のPOWER Watch2016年9月号(No.89)の【全国時計修理優良店ガイド】の特集に当店が紹介されました!

また、今回も【時計修理&メンテナンスコンプリートガイド】の取材にも協力させていただいております。
本誌はロレックスのデイトナをはじめ、新旧のモデル比較を特集しています。気になる新作情報を是非チェックしてください!

時計修理技術者コラムVol.8 ゼンマイと香箱~Cal.ETA2892-2/Cal.ETA6497編~

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ゼンマイと香箱

機械式時計の動力といえば、みなさんご存知のゼンマイです。当店でもゼンマイ切れによる止まりでの相談を、日々多く受け付けております。交換頻度も非常に高い部品です。
今回は機械式時計に欠かせないゼンマイと、ゼンマイが収まる香箱についてご紹介させていただきます。

例としてフランクミュラーなどに使用されているETA2892-2(自動巻)と、パネライなどに使用されているETA6497(手巻き)を見ていきます。

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Cal.ETA2892-2(自動巻)のゼンマイと香箱

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Cal.ETA2892-2(自動巻)のゼンマイです。

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Cal.ETA2892-2(自動巻)の香箱です。

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自動巻きの時計では、手巻きでのゼンマイ巻き上げ以外にも、腕に着用しているときの運動を利用し、ローターを回転させてゼンマイを巻き上げる方法も使用します。そのため、ゼンマイが完全に巻き上げられた状態で力を逃す“スリッピング”を発生させる形状になっています。

 

Cal.ETA6497(手巻)のゼンマイと香箱

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Cal.ETA6497(手巻)のゼンマイです。

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Cal.ETA6497(手巻)の香箱です。

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手巻きの時計の場合は、ゼンマイが完全に巻き上げられた状態になると、ゼンマイが香箱の内壁に引っかかる形状になっています。そのため、ゼンマイが完全に巻き上がると、巻き止まりがあります。(それ以上巻き上げることはできません。)

 

ゼンマイ(香箱)関連の故障と不具合

ゼンマイや香箱関連の故障と不具合は以下の通りです。
①手巻き時計で、ゼンマイが全巻の状態からさらに力が加わってゼンマイが切れてしまう。(止まり)
②自動巻き時計、手巻き時計共にゼンマイの金属疲労によってゼンマイが切れてしまう。(止まり)
③ゼンマイ切れではないが、継続的に使用することで、ゼンマイが劣化、変形してしまう。(パワーリザーブ不足、精度不良)
④自動巻き時計で、油切れ状態で長期間の使用により、香箱の内壁が摩耗し、スリッピング不良が起こる。(パワーリザーブ不足、止まり、精度不良)

 

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①手巻き時計の巻き止まりをしている状態でさらに巻き上げ方向へ力がかかった場合に発生します。香箱真に近い部分が外端の香箱内壁に引っかかり、リベットが打たれている部分が外れます。

 

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②自動巻き、手巻きの時計共に、時計の使用によりゼンマイの収縮と開放を何度も繰り返すことで、金属疲労を起こし発生します。香箱真に引っかかる部分が、ゼンマイを巻き上げる際に力がかかるため折れやすいです。(特にゼンマイの厚みがあるムーブメントで多いです)

 

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③自動巻き、手巻きの時計共に、時計の使用によってゼンマイの経年劣化と弾力がなくなることで起こります。劣化し、変形したゼンマイはS時の形状が香箱真に近い部分は巻がきつくなり、外周に近くなるにつれ広がってしまいます。この場合、香箱に特に問題が無く、スリッピングも正常に起こっていますが、十分な動力を蓄えることができず時計の振り角減少(時計の動きが弱くなっている状態)や、パワーリザーブ不足などの不具合が発生します。

 

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④自動巻き時計の香箱の内側に本来塗布されているモリブデングリスが長期間の使用で乾いてしまい、油切れ状態で稼働している時計に多く見られます。スリッピングは金属同士が擦れながら発生するため、油切れ状態の使用は摩耗が進行してしまいます。内壁が削れてしまった場合は、ゼンマイ交換だけではスリッピング不良を解消することができず、香箱一式の交換が必要になるケースが多いです。

 

ゼンマイの交換時期

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機械式時計のゼンマイの寿命は使用頻度や使用環境によって大きく変化します。

ゼンマイ切れによって「使いたいときに使えなかった!」など、残念な思いをする前に定期的にお時計の状態を検診することをお勧めします。

 

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時計修理技術者コラムVol.7 カレンダー送りの構造と不具合~Cal.ETA7750編~

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カレンダーの不良

日頃お問い合わせいただく時計の不具合で比較的多くご相談をいただくのが、カレンダーの不具合です。「カレンダーが変わらなくなってしまった」「カレンダーの切り替わりが非常に遅い」などの故障はなぜ起こるのでしょうか?
今回はブライトリング/クロノマットエボリューションや、オメガ/スピードマスターなど、クロノグラフモデルに多く使用されているCal.ETA7750を例に取りご紹介させていただきます。

カレンダー車とカレンダー送りの仕組み

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時計のカレンダーディスクを送る役割をしているのがカレンダー車です。Cal.ETA7750のカレンダー車は、歯車にカレンダーディスクを送る爪を組み合わせた構造になっています。f:id:watchfan1999:20160803140211j:plain

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カレンダー車は、筒車と連動して、1日(24時間)をかけて丁度1周します。カレンダー車の爪がカレンダーディスクの歯を1日分送る構造になっています。

このようなシンプルな構造のため、爪がカレンダーディスクを送っている最中に、カレンダーの早送り作業を行ってしまうと、カレンダーディスクの歯と、カレンダー車の爪を変形や破損させてしまう原因となります。

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変形したカレンダー車です。カレンダーが変更できなくなったり、カレンダーがAM0:00丁度に切り替わらなくなります。

 

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カレンダー車の不良により、日付の切り替えがAM6:00ごろになった時計

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新品のカレンダー車(前)と、変形したカレンダー車(後)

カレンダー車と共に、カレンダーディスクも破損した場合、カレンダーディスクの交換が必要になり、修理代金が高額になるケースがあります。
また、カレンダーディスクはメーカーのオリジナルの部品が使用されているモデルもあり、メーカーオリジナルのカレンダーディスクは入手が困難なため、メーカーで修理を受けざるを得ない場合もあります。

カレンダー早送り禁止時間帯と、カレンダーの操作方法

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上記でご紹介したような故障を避けるために、カレンダー操作禁止時間帯が設けられています。

 

カレンダー早送り禁止時間帯……カレンダーが切り替わる前後4時間(PM8:00~AM4:00)の間に、カレンダーの早送り操作を禁止している時間帯のことを指します。
※時計のモデルによって前後3時間~4時間の差があります。

 

上記時間帯はカレンダー車の爪と、カレンダーディスクの歯が干渉しているため、カレンダーの早送り操作は行わないでください。

日付・時刻合わせをする際は、
①文字盤上の時間をAM6:00(もしくはPM6:00)にまず合わせます。
②日付を前日まで早送ります。
③前日まで送った後、針回しで現在の日付・時刻まで調整します。

上記を行うことで、操作禁止時間帯を避け、安全に時間の調整を行うことができます。
大切なお時計のために、時間調整にも気をかけてご使用いただくことをお勧めします。

 

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時計修理技術者コラムVol.5 自動巻の巻き上げ効率~ローター真編~

 

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定期メンテナンスのススメ・部品の摩耗

機械式の時計を永く使うには定期メンテナンスが欠かせません。その中でも自動巻きのお時計をお持ちのお客様から「着けていてもすぐに止まってしまう。」、「夜外して朝には止まっていた。」などのご相談を非常にたくさんいただきます。なぜそのような状態になってしまうのでしょうか?今回はロレックスのお時計を例にとって自動巻きの仕組みと部品の摩耗についてご紹介いたします。

自動巻の仕組み

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 自動巻で重要な役割を担っているのがローターです。ローターは半月型でおもりの役割をし、回転することでゼンマイが巻き上がります。

着用していると腕の動きに連動してゼンマイが巻き上がるため、使用中はゼンマイを手巻きする必要がありません。

ロレックスのローター

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 現在流通しているロレックスの時計のほとんどに自動巻きの機構(パーペチュアル機構)が搭載されています。ローターは自動巻きの機構で非常に重要な部品で、ムーブメントの中でも大きな部品です。十分な巻き上げ効率を確保するために、大きなローターをスムーズに回転させる必要があります。しかし、大きなローターを支えている軸(ローター真)には非常に大きな負担がかかっています。

 

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状態良好のローター真。

 

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新品のローター真です。
摩耗や傷は一切ありません。

 

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 使用に伴い、汚れやさびが発生したローターです。

 

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ローター真部分の油が乾いた状態のローター真です。
ローター真の周辺に赤い錆や、ローター真が削れたことによって発生した鉄粉が付着しています。

 

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先端が激しい摩耗により細くなってしまったローター真です。交換が必須になります。
この状態まで経過してしまうと、ローターを適正な位置で支えることができず、ムーブメントや、裏蓋に擦れてしまう症状が起こります。(時計を振るとカチカチと異音が鳴るようになります。)
ムーブメントや裏蓋に擦れている状態での使用が長く続くと、擦れて傷がつくだけではなく、大量に鉄粉が発生し、他の部品も痛めてしまう可能性があります。

 

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ローターが擦れて傷ついたムーブメント。

 

高額なメンテナンス費用を避けるためにも……

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 「最近遅れるようになった。」、「以前より止まるのが早くなった。」その他内部異音など、具体的な症状が見える場合はもちろん、そうでなくても意外と時計内部の摩耗や劣化が進行していることもあります。

大切なお時計を永く使っていただくためにも、ぜひ定期的なメンテナンスをお勧めいたします! 

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