クロノグラフの動作不良
クロノグラフ(ストップウォッチ機能)の時計は、3針の時計に比べて部品数が多くなっています。部品が多いと不具合が起こる可能性も高くなります。今回はオメガのスピードマスター プロフェッショナル/Speedmaster Professionalに使用されているCal.861(現行モデルは3570-50、3573-50などに搭載されているCa.1861)の12時間計の不具合をご紹介いたします。
スピードマスター プロフェッショナル
オメガ/スピードマスター プロフェッショナル/3891-50/Cal.861
1957年にスピードマスターの1stモデルが発表され、1965年にNASAの公式時計となりました。1969年には世界で初めて月に降り立った時計(ムーンウォッチ)として知名度を獲得しました。数々のモデルチェンジを経て現在のCal.1861へ進化しました。初代のCal.321、次世代のCal.861も全てレマニア製のムーブメントをベースにしています。
Cal.861
Cal.1861
12時間計の不具合
Cal.861における12時間計の動作不良の原因としては、
①歯車の軸(ほぞ)折れによる動作不良
②香箱真に付属するカナ(歯車の上、または下についている児車)のフリクションスプリングの役割をする板バネの強弱によるもの
③12時間計ストップレバーの状態不良
が考えられます。その中でも②について以下に説明していきます。
12時間計車を駆動させるカナです。
歯先をつぶさない強さで規制しているので、強い力がかかると動いてしまいます。
12時間計車はクロノグラフを作動させた時にストップレバーが離れた香箱と連動して動作するようになっています。また、クロノグラフを止めた時はストップレバーにより12時間計、その隣の香箱のカナの動きを止めています。
その際にポイントとなるのが、香箱裏のカナを抑えている板バネの強さになります。
板バネが強すぎる場合、12時間計ストップレバーが12時間計車と当っていますが、香箱と連動してカナが動いてしまうため、クロノグラフを未作動の状態で12時間計が動いてしまいます。
逆に板バネの押さえる力が弱い場合はクロノグラフを作動しても12時間車は香箱と連動して動作しなくなります。
オーバーホールの際、香箱は完全に分解するため、板バネは必ずチェックして適正な強さで抑えることができるように調整しています。
クロノグラフはオーバーホールの通常料金も高く設定されていて、部品も多いため修理代金が高額になりがちです。深刻な破損が起こる前に、動作の異常を感じたらぜひご相談ください!